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» 2011年09月12日 14時39分 UPDATE

本田雅一のTV Style:東芝が4K×2Kに狙いを定めた理由

東芝が「IFA 2011」で発表した「55ZL2」は、4K×2Kパネルにアクティブレンチキュラーを貼付けた裸眼立体視対応テレビだ。しかし詳細に見ていくと、同社の目的はむしろ4K×2Kにあると分かる。

[本田雅一,ITmedia]

 「ドイツにまで行ってたんだから、ネタは豊富にありますよね〜!」とは、担当Sの言葉。いやいや、確かにそのとおり。ドイツ・ベルリンで毎年開催される「IFA」は、例年その年の年末商戦に挑む新商品、それに来年1年の戦略を示唆するコンセプトの提示があって盛り上がるイベントだ。とくにここ数年、日本の「CEATEC JAPAN」が国際展示会としての位置付けが後退したこともあって、日本のメーカーもベルリンを重視するようになってきていた。

ts_toshiba01.jpg 東芝ブース

 ところが、今年はいまひとつ、どのメーカーも元気がない。テレビ以外の分野に目を向ければ、タブレット端末やスマートフォン、それにインテルが新しいタイプのPCとしてイニシアティブを取っている「Ultrabook」と、新製品がたくさん出てきたのだが、テレビという視点ではやや寂しい展示会だった。

 世界ナンバーワンシェア(とはいえ日本では販売されていないが)のサムスンは、昨年はスマートテレビコンセプトに勢いよく新世代のテレビを見せていたものの、今年はすでに発売済みの製品を中心に展示。同じ韓国メーカーのLGも同様だ。日本メーカーもソニー、パナソニック、シャープともに、テレビに関するメッセージはごく限られたものだった。

 そんな中で気を吐いたのが東芝。IFAの基調講演を東芝デジタルプロダクツ&サービス社・社長の大角正明氏が担当したことも気合が入った理由だったはずだ。かつて数多くのクロモノ家電ヒット作を産んできた東芝だが、現在はテレビ事業とレコーダー事業にフォーカスしている。ここにタブレット端末やPCをどう絡めていくかが、東芝のテーマになっている。

 そんなわけで予告されていたとおり、4K×2Kパネル(実際にはフルHDの縦横2倍解像度のパネル)にアクティブレンチキュラーを貼付けた裸眼3DテレビのREGZA「55ZL2」を展示していた。

ts_toshiba02.jpg 「55ZL2」

 レンチキュラーとは、円筒形の一部を切り出したようなカマボコ型のレンズをストライプ状に配置し、画素ごとに指向性を持たせ裸眼3Dを実現する方法。今回の製品では9つの視差を作り出し、その視差間に8カ所の”3Dで見える場所”を作る。解像度は片目あたりで1/9の画素数になるため3D時の画質は720pよりも少ない。(分かる人にはPAL信号のスクイーズ記録ぐらいといえば分かるだろうか)。

 このレンチキュラーに”アクティブ”という文言が付いているのは、電気的にオンとオフを切り替えることができるから。単に2Dと3Dを切り替えられるだけでなく、視聴位置を左右に少しだけズラすこともできるそうだ。さらにはカメラを内蔵し、視聴者の右目と左目の境目を認識し、視聴者が3Dで映像を楽しめるようレンズの形状を電気的に変えてくれる。もちろん、あまりたくさんの人数の場合は、誰かが見る場所を変えなければならない場合もあるが、実際に見始めてみるとそこはあまり問題ではない。

ts_toshiba03.jpgts_toshiba05.jpg REGZA 55ZL2の裸眼立体視(出典は東芝)

 問題は解像度が低いため、細かな3D描写が曖昧になることだろう。画質の低下よりも、細かな3Dの凹凸が失われることが気になった。このあたり、アトラクティブに手軽に楽しむなら裸眼、映画をじっくり作品として楽しむなら3Dメガネのほうがいい。すなわち両方に対応してくれるのが理想だろう。

 とはいえ、むしろ東芝の本当の狙いは裸眼3Dではなく、4K×2Kパネルにあるのではないかと感じた。REGZAシリーズには今年から、複數フレームを参照する超解像技術が用いられている。その効果はとても素晴らしいが、もともと高画質なBlu-ray Discの場合だと、超解像後の情報がフルHDパネルに制限されてすべて出てこない。

ts_toshibaifa02.jpg 55LZ2に採用された超解像技術

 一方、サイズさえ同じならば解像度が縦横2倍になっても、十分な歩留まりで液晶パネルは生産できるようになっている(もちろん生産量が少ないため現時点では高価だが)。デジタル写真の高画質表示やカムコーダーの高精細化(実際、IFAには4K2K対応カムコーダーがビクターから展示されていた)といったトレンドも考えれば、今からフルHDの先へと踏み出す意味はある。

 もちろん、読者の中には「フルHDなんて意味がないじゃない。地デジなんて1440×1080ピクセルしかないんだから」という方もいるかもしれないが、複數フレーム超解像が順調に進化してチューニングされれば、いやいやどうしてテレビでも4K×2Kの意味を見いだせるぐらいの違いがあると、実際のデモンストレーションを見て感じた。

 4K×2Kパネル採用のテレビは、展示フロア外でシャープも地元ディーラー向けに紹介していたそうだ。筆者は時間が合わず見ることができなかったが、4K×2Kパネル採用の試作機はソニーなども出展をしたことがある。各社一斉に……とはいかないものの、日本市場でも地デジ移行による買い替えブーム後の高付加価値モデルとして各社から提案があるはずだ。

 このあたり日本市場での動きに関しては10月の「CEATEC JAPAN」の動向に注目したい。ここではIFAでは披露されたなかった提案も陽の目を見ることになる。(次回に続く)。

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