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洗練された3Dプロジェクター、注目モデルを一気レビュー麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(3/6 ページ)

» 2011年11月24日 18時02分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

強誘電液晶メガネを採用した三菱のDLPプロジェクター

麻倉氏:三菱電機は、今年の春にSXRDを使用した「LVP-HC9000D」を発売しました。先ほど触れたように、順次描き込みの場合、明るさを上げようとするとクロストークが目立ちますから、二者択一で難しかったと思います。

 三菱はこの秋、DLPの「LVP-HC7800D/DW」を追加しましたが、これはとても出来が良いですね。DLPデバイスの応答速度はひじょうに速いのでクロストークが見えにくく、論理的には液晶シャッターを閉じる時間を短くすることができます。でも、液晶シャッターの開け閉めに時間が掛かるのではせっかくのDLPの特性が生かせません。

三菱電機の「LVP-HC7800D/DW」と強誘電液晶メガネ。クロストーク“ほぼ”フリーを実現した

 そこで三菱は、シャッターと合わせて瞬時に切り替わる強誘電液晶という超高速な液晶をメガネに採用しました。強誘電液晶は、日本ではシチズンしか作っていない希少なデバイスですが、その効果は抜群で、画面はひじょうに明るく、フリッカーが少ない3D映像を見せてくれます。フリッカーは黒の時間(シャッターを閉じている時間)が長いと感じやすいのですが、原理的に強いのです。クロストークに関しても、“ほとんどゼロ”といえるレベルになっていました。

 ただし、2つほど問題があります。DLPはカラーホイールを使って時間的にRGBを切り替えるため、色ノイズが発生しやすいこと。例えば暗いシーンで白い物体が画面に出てくると、RGBの“たすき”、つまりカラーブレーキングノイズが見えてしまいます。カラーブレーキングノイズを抑えるにはカラーホイールを早く回すやり方がありますが、そうすると階調情報が少なくなってしまいます。ここでまた二者択一ということになってしまいますね。

 もう1つは、専用メガネが重いこと。強誘電液晶は繊細なデバイスで、衝撃を与えるとダメになってしまいます。このためメガネにショックアブソーバーを取り付けていて、重量が95グラムになってしまいました。映像が良いというポジティブな面に対し、重いメガネは今後の課題といえるでしょう。

4Kに注目、ソニー「VPL-VW1000ES」&JVC「DLA-X90R」

麻倉氏:もう1つ素晴らしいと感じたのは、ソニーが発表した4K対応の3Dプロジェクター「VPL-VW1000ES」です。ビクター(JVCケンウッド)の「DLA-X90R」は画素ずらしによってフルHD解像度のパネルで4K×2Kを作り出しますが、ソニーはリアル解像度で4K、しかも“ハリウッド4K”です。

ソニー「VPL-VW1000ES」と4K版「SRXD」デバイス。サイズを従来の0.61型から0.74型へと拡大。さらに画素ピッチを7マイクロメートルから4マイクロメートルへと微細化することで、有効885万画素(水平4096×垂直2160画素)を達成した

 ハリウッド4Kというのは、DCI(Digital Cinema Initiatives、ハリウッド7大スタジオで構成される業界団体)が決めた4K機器に対する要求仕様で、つまりはデジタルシネマの標準的なスペックです。解像度は4096×2160ピクセルと、単純にフルHDを4倍にした4K(3840×2160ピクセル)より少しだけ長いところがポイント。映画にはさまざまなアスペクト比がありますが、このハリウッド4Kを使うと、各種ビスタサイズなども収まりやすい。つまり黒帯の面積を最小化できるのです。

 VPL-VW1000ESの場合、アップコンバートで情報量を増やした3D映像をどのように見せるかに注目しました。もともと精細感の高いBlu-ray 3D「アバター」の場合、奥行き感を構成している各レイヤーの描き方が明確になって質感が高まったため、奥行き感が格段に向上した印象でした。ここまでの明確さ、決然差は体験したことがありません。

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