スマートテレビが担う近未来の“イノベーション”本田雅一の視点(3/3 ページ)

» 2011年12月20日 10時00分 公開
[本田雅一,PR/ITmedia]
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イノベーションの条件はそろいつつある

 今、「カメラ」といえば、普通はデジタルカメラのことを指す。1990年代に「いずれカメラはすべてデジタルになる」と話したりすると、「とんでもない!」と言われたものだが、今や写真はほとんどがデジタルになった。さらに家庭内にあるテレビで、自由自在に写真を引き出して見たいというニーズも当たり前に存在している。

 このようなイノベーション、すなわち”刷新”は、条件がそろったときに起こるべくして起こるものだ。現状を打破して前進するために必要なプロセスだが、適切なタイミングというものがある。

 例えば、スマートフォンの流行。背景には携帯電話網を使ったデータ通信回線の充実、小型コンピュータ機器の能力向上、インターネットを通じたサービスの品質アップとコスト低減(クラウドの発展)といった要素が絡み合い、従来型端末の高機能化に限界が見え始めていた。だからこそ、周辺環境の変化(と今後の変化の見込み)を加味した上で、新たに刷新された”スマートフォン”という枠組みが成功したわけだ。

 では、テレビ業界は? というと、やはりイノベーションを引き起こす条件はそろっている。まず、放送と通信、それぞれ特性の違う情報の伝達手段が混じり合いつつある。放送の持つパワフルな”伝達力”はいまだ健在だが、一方でソーシャルメディアを中心に通信をベースにしたコミュニケーションもめざましい発展を遂げた。消費者は、従来のテレビとは異なる軸の進化にも目を向け始めている。

 一方、アナログ停波を経てハイビジョンテレビが一般にも広く普及し、さらに4K×2Kのような高解像度化も見えてきた。メーカーはいくつものベクトルで新しいテレビを作りだそうとしている。

技術の進化は止まらない。70V型の新製品「LC-70X5」は、明るいシーンでLEDの輝度を通常の約2倍にまで高める「メガブライトネス技術」を搭載し、太陽の“輝き”までも表現する。一方、2012年の年央に登場する予定の「ICC 4K液晶テレビ」は、新機軸の超解像技術と高精細パネルで大画面テレビの映像に自然な立体感やリアリティーの高い質感を与える

 なによりスマートフォンやタブレットといった、新しいユーザーインタフェースを持つデバイスが普及し始め、ネットワークに常時接続される形で利用者の手元に存在している。まだほかにも挙げられるが、テレビ放送を受信して画面に映す”テレビ受像機”という商品の考え方を、まさに一新させる条件は整ったといえるだろう。

 このような状況下で、テレビメーカーだけでなく、ネットワークサービス事業者やコンテンツ事業者などが加わって行う「スマートテレビ研究会」(座長:慶応義塾大学メディアデザイン研究科の中村伊知哉教授)が発足したことは注目に値する。単にネットワーク機能を持つだけでは、全くスマートにはならないことは、過去の歴史が証明している。ハードウェア、ソフトウェア、サービス、それに周辺機器との連携などが、意識しなくともできるようになってこそのスマートテレビ。それを推進するため、複数の分野に跨る関係者が集まり、日本なりのスマートテレビの進む方向を決めていくという。

 彼らによると「スマートテレビ研究所」での議論も、スマートテレビ研究会の発足に対して多少の影響を与えたとのこと。また一般ユーザーにアプローチしたシンポジウムは、堅いジャンルの動画としては異例なほどの注目を集めた。その後のアーカイブ配信や全文掲載記事に対する反響も大きく、スマートテレビの啓蒙を目的としたスマートテレビ研究所は、その役割を果たしたといえる。

 今後、スマートテレビはテレビ業界のみならず、さまざま業種を巻き込みながら、具体的な製品やサービスの開発が進むことだろう。それぞれの製品をどのように連携させ、その結果としてユーザーにどのような利便性をもたらすことができるのか。われわれの「スマートテレビ研究所」は次のコンテンツをもっていったん幕を下ろそうと思うが、イノベーションの始まりはこれからだ。

“スマート”はテレビの新しい評価軸

 さて、最後に筆者の個人的なスマートテレビに対する考えについて書いて、締めとさせていただきたい。

 まず、みなさん自身で「テレビとは何か」を思い出してほしい。テレビとコンピューターディスプレイの違いはなんだろうか?

 テレビ(受像機)とは、テレビ放送を受信し、楽しむために作られた製品だからこそ、「テレビ」と呼ばれている。同じように液晶パネルを使っているようでも、テレビではないものは「ディスプレイ」と呼ばれる。

 テレビ番組はつまらなくなった、視聴率が落ちた、映像配信サービスの方がずっと面白い、これからは放送の時代ではない。そんな風に言われて久しいが、実際にテレビがメディアとして影響力トップの座を明け渡したことはない。”テレビ(放送・番組)はもうダメだ”という意見を見るのは、たいていの場合、SNSを中心としたネット界隈のコミュニティーだ。

 しかし、本当にネットの映像コンテンツはテレビに匹敵するようなコミュニケーション基盤になっているのだろうか? というと、まだまだ桁が2つ(あるいはもっと)ほども、テレビの方が反応がいい。確かにテレビ放送だけがコンテンツの全てではなくなってきた。それにより、(受像機としての)テレビのあり方は変わっていくだろう。

 あくまでもコンテンツ主導であること、そこにコンテンツが生まれてくる“時代背景”を考慮すると、テレビが変革していく方向が見えるのではないだろうか。従来の高画質、高音質、大画面といった評価軸だけでなく、時代に合わせてのネットワークサービスとの統合。そこにこそ、“スマートテレビ”の実像があるように思う。

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