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“成長するウォークマン”は基礎体力も十分――「Z1000シリーズ」野村ケンジの「ぶらんにゅ〜AV Review」(2/2 ページ)

» 2012年01月27日 16時33分 公開
[野村ケンジ,ITmedia]
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“成長するウォークマン”の意味

 音楽再生用のウォークマンという限定した使い方において、「Z1000」シリーズが少々大柄すぎる感がいなめないのは確かだ。タッチパネルと液晶パネルの間に隙間(空気層)がない、「エアギャップレス構造」を採用した4.3型の液晶ディスプレイは、映りの美しさもあってとても見やすく、タッチパネルとしてもなかなかの優秀さを誇るが、音楽プレーヤーというよりも携帯ゲーム機のサイズであることは確か。

「iPad」「iPhone 4S」とのサイズ比較

 大きさについては、A860シリーズのほうが理想的なサイズに思えるのは致し方ないところだ。時々ビデオを見たり、アプリを活用するとしても、もう少し小さい、画面+ハードキー部分のみのサイズほどにシュリンクできれば(実寸としては縦2センチ、横1センチほどカットできれば)よいのに、というのが正直な感想だ。まあ、ハードウェア的にかなり無理な要望なのは分かっているが、画面を微妙に小さくしても、そのあたりの「日本人の手にしっくり収まる最大サイズ」が、ちょうど良い落としどころのような気はする。

 アプリが使える、という部分に関しては、とてつもなく魅力的で、そして大いに可能性を感じる部分だ。もちろん、これはゲームや情報ツールとしての話ではなく、音楽プレーヤーとしての話。ソニーもなかなかに使い勝手の良い音楽プレーヤーを「Z1000」シリーズ用に用意しているが、数多の人たちが作ったプレーヤーアプリが使えるというのは、これまでの音楽プレーヤーとは根本から異なる、画期的な部分。何しろ、ソニーが対応する音楽ファイル形式以外も、別のプレーヤーを使えば再生することも可能だからだ。例えば「Z1000」シリーズの標準プレーヤーでは対応していないFLACやアップルロスレスなどの高音質音楽ファイルも、「PowerAmp」のようなマルチコーデック対応のプレーヤーソフトを活用することで、手軽に再生できるようになるのだ。これは大きい。そのうち、いま注目のDSDファイルなども再生できるようになるかもしれない。この発展性、可能性の高さがあるだけでも、Android OSを採用した意義があるといえる。

オリジナルアプリ群(左)。楽曲再生画面(中)。Webブラウザは見やすい(右)

「DLNA」アプリ。DTCP-IPには対応していないものの、サーバ/プレーヤー/コントローラーの機能を持ち、さまざまな機器連携が可能だ。写真は、コントロール機能を利用してネットワーク内の簡易NAS(ルータに接続したHDD)にある楽曲をWindows(WMP)に再生させたところ

ストレスのない、清々しいサウンド

 さて、肝心のサウンドはというと、一般的な携帯プレーヤーとは一線を画すクオリティー。トータルの印象としては、ストレスのない、清々しいサウンドというイメージの音色傾向だ。とくに解像度感の高さが際立っており、空間的な拡がりも良好。A860シリーズと比較すると高域の伸びに多少のクセがあり、ピアノの音色はわずかにカラーレーションが加わるが、決して嫌な感触はない。またX1000シリーズに対しては、低域の力強さ、豊かさが多少控えめとなる。とはいえ、クオリティーレベルに関してはなかなか拮抗しているし、「A850」以前のAシリーズに対して、格段の音質向上を実現しているのはさすが。とくにAndroid端末としてこの音質を実現していることは、画期的とさえいえる。

 このように、A860シリーズ/X1000シリーズに対してはわずかに弱点らしき部分が浮かび上がってくるものの、それほどの差異はないうえ、それを補ってあまりある機能的な有利さがZ1000シリーズの魅力といえるだろう。X1000シリーズ、A860シリーズで満足している人に買い替えは勧めないものの、これから携帯プレーヤーを選ぼうという人に対しては、「音楽プレーヤーの新たな可能性を示してくれる魅力的な1台」として、推薦させていただこう。

音質評価  
解像度感 (粗い−−−○−きめ細かい)
空間表現 (ナロー−−−−○ワイド)
帯域バランス (低域強調−−−○−フラット)
音色傾向 (迫力重視−−−○−質感重視)
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