薄型テレビはどうなる? 「2012 International CES」で見えてきた2つの新しい潮流本田雅一が検証(3/3 ページ)

» 2012年01月30日 10時00分 公開
[本田雅一,PR/ITmedia]
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 米国でのテレビ販売は、いくつかの巨大流通で販売される非説明型の製品が目立つが、一方で画面サイズに対して価格が2倍以上の高付加価値製品を販売する専門店や「MAGNOLIA」(マグノリア)のように高品位な製品に特化したチェーン店もある。市場でフルHDテレビが当たり前になったことで、従来のような単純なスペック比較ができなくなり、高級店と普及製品の量販店との違いがより明瞭(めいりょう)になってきたからと見る向きもある。

 高級志向の動きは顕在化している。例えば、シャープが「ELITE」(エリート)ブランドを北米で展開していくことを表明したこと。ELITEは、シャープの資本提携先であるパイオニアが北米で展開していた高級ブランド。オーディオ、ビジュアルともに、品質へのこだわり、優れたデザインなどで評価が高い。

 シャープは、ELITEとAQUOSのダブルブランドで、60インチから80インチまでのラインアップを強化していく。北米では、55インチが売れ筋のサイズ(日本でいう37インチや42インチの感覚)であり、さらに60インチ以上へとテレビの大型化が進んでいるからだ。同じ高付加価値商品として、大型テレビにもELITEブランドがマッチすると判断したと思われる。

改めて「4K+ICC」に見入る本田氏。“光クリエーション技術”をうたう「ICC」は質感と立体感の表現に優れ、単なるアップコンバートとは明らかに異なる映像を映し出す。早ければ2012年の夏頃に製品が登場する見通しだ

 一方、日本では「2012年の年央に発売予定」とだけアナウンスされている「4K+ICC」は、その画質で人目をひいた。一般的にテレビは大画面になると、画質差はより大きく感じられる。これは、画面サイズと一緒に画素のひとつひとつが大きくなり、映像が粗く見えてしまうからだ。

 それを防ぐため、高精細パネルで画素を増やしつつ、超解像処理などで情報量を補うのが4Kテレビ。中でもICCの“光クリエーション技術”は、テレビに映る物体の“つや”や質感を本物らしく描き出し、奥行きや立体感まで感じさせる。シャープブースの人垣を見れば、その映像がどれほどのインパクトを持つかが分かるだろう。実際の製品が登場したとき、デジタル放送やBlu-ray Discといった現在のコンテンツでどこまでの効果が出るのか、検証するのが今から楽しみだ。

 もちろん、コンテンツがネイティブの4K2Kになれば、4Kテレビはより美しい映像を見せてくれる。放送やディスクメディアでは当面4Kコンテンツが登場する予定はないが、前述の3Dと同様に4K2Kコンテンツのネット配信に注目が集まっている。情報量はフルHDの4倍と3Dよりも厳しいものの、ネット配信の特性やコーデックの進化を考慮すれば決して無理な話ではない。放送規格は簡単には変えられないが、ネット配信なら新しいフォーマットにも容易に対応できる。さらにテレビが新しいコーデックに対応できるようになれば、帯域幅の問題はさらに小さくなるだろう。大容量コンテンツの登場は、テレビの高画質化を進めるとともに、スマート化のドライバーにもなり得る。

消費者の立ち位置に戻ってきたテレビ

 フルHDとデジタル化が完了し、そこから先の多様性が増したテレビ。今回のCESでは、その中でも高品位化とスマート化という方向性が定まってきた印象を強く受けた。と同時に、半年にわたって「スマートテレビ研究所」が議論してきたことが、業界全体の動向にかなり近いものであったことが確認できた。

 「スマート化といっても、いったい何をさせるの?」という疑問の声に対しては、“ネットワークサービスがテレビ番組や映画を、より深く楽しめるものにする可能性”について指摘しておきたい。放送という技術の枠組みを破り、次の世代への橋渡しを行うのは、あるいは通信になるかもしれない。しかし通信だけでテレビ視聴者のニーズを満たすことはできない。

 「テレビは衰退し、ネットの映像配信が隆盛を極める」というのが極論なら、「テレビ放送だけで今後も柔軟にエンターテイメントを提供できる」というのも、やはり間違いである。テレビが家庭における最大の娯楽であり続けるためには、放送も通信も活用する必要がある。さらに普及したスマートフォンやタブレット端末も生かし、視聴者により楽しい“テレビ”をスマートに(賢く)提供する。

 まるで業界内の議論が一周し、やっと消費者の立つ場所に戻ってきたようだ。スマートテレビ研究所の最後の記事で、このような報告ができたことをうれしく思う。

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提供:シャープ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2012年2月19日