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シャープ、大幅下方修正の主因は“液晶”

» 2012年02月01日 19時55分 公開
[ITmedia]
シャープの片山幹雄社長

 シャープが2月1日に発表した2011年度4〜12月期の連結決算は、売上高で対前年比81.7%となる1兆9036円、最終損益は2135億円の赤字となった。通期の最終損益は2900億円の赤字になる見通しだ(→関連記事)。国内液晶テレビ市場の急激な市場悪化に加え、大型液晶パネルの外販減少、国内携帯電話の販売減などが響いた。「厳しい報告になった。“原因は液晶”と言わざるを得ない」(シャープの片山幹雄社長)。

 シャープは昨年6月に発表した液晶事業の構造改革で、価格下落が著しい20〜40インチの液晶パネル生産から脱却を図り、60インチ以上の大型パネルとスマートフォンやタブレット向けに需要が見込める中小型高精細液晶パネルに注力する方針を示した(→関連記事)。テレビの生産拠点としてブランドを確立してた亀山第2工場をIGZO液晶の生産ラインに切り替える思い切った方策も打ち出し、先の見えない円高や海外メーカーの台頭に備えて“ソフトランディング”を目指していた。

 しかし、いくつかの“想定外”が起きた。1つは「国内のテレビ販売に下支えしてもらう」という目論見が外れたこと。アナログ停波後の落ち込みは激しく、「10〜12月期の国内テレビ市場は、前年同期比で台数が30%台、金額は20%台と想定以上の悪化だった」という。こうした国内需要の急減に加え、中国市場でも政府の家電買い替え促進策が終了して消費が鈍化。一方で米国の大型化戦略は成果を上げ、60V型以上の売上構成比は約6割をキープしているが、「海外の伸びが国内の落ち込みをカバーできなかった」。

 もう1つの想定外は、亀山第2工場に導入を進めていたIGZO液晶生産ラインの稼働が遅れたこと。ライン自体は完成したが、製品への組み込み調整などに手間取り、本格稼働は当初目標から約2カ月遅れの2012年2月にずれこんでいる。

 一方、テレビ向け液晶パネルの外販も円高や海外の需要減少によって1/3程度まで減少し、今期は在庫評価減も実施。テレビ向け大型パネルを生産する堺工場は、「しばらくの間」最大生産能力の約半分にまで稼働調整を行う。この期間を利用して、堺工場にIGZO液晶の生産ラインを導入することも検討していく。「IGZO液晶は、これまでターゲットに挙げていたスマートフォンやタブレットに加え、より大きなノートPC向け、モニター向けといった需要が見込める」(片山氏)。

 シャープは今後、改めて液晶事業の構造改革を推進するとともに、海外では円高に左右されないテレビの現地生産を進める。60V型以上の高付加価値製品に注力する方針は変えず、早期の黒字回復を目指す方針だ。「テレビは、シャープのコアコンピタンス。地道に世界で売っていく」(片山氏)。

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