一般的なカナル型イヤフォンとは次元の異なる、まさにカスタムイヤーモニター然としたサウンド。音色がとてもリアルで、まるでライブハウスにいるかのような演奏が楽しめる。
ドラムはキレがよく、それでいて音のひとつひとつが印象的なので、グループ感がとてつもなく高い。ギターの音もかなり分厚く、しかも表現が細やかなので、ギターのモデルばかりかピックアップの種類まで分かりそう。けれども一番の魅力は、やはりヴォーカルだ。男性ボーカルの力強い、顔をこちらに向かってぐっと押し出したかのようなガッツリした歌声にも思わずしびれるが、ウィスパーボイス系の女性ボーカルは、まるで耳元でささやかれているようで、思わず鳥肌が立ちそう。ボーカリストの魅力が、存分に発揮される製品だ。
何を隠そう、筆者は「FitEar MH334」を所有しており、日常的に使用しているのだが、相当気に入りつつも唯一不満に思っていたのが、中域のしっかり感に対して高域がわずかに軽々しい音色であることだ。それが「FitEar TO GO! 334」では、チタン製「ダイレクトHFチューブ」のおかげもあってか見事に解消され、抜けのよい、つややかさをもつ美音となっている。とくにピアノ(の主旋律)と女性ヴォーカルが顕著で、どちらも一段と実体感のある、かつのびのびとしたサウンドを聴かせてくれるのだ。低域も「FitEar MH334」に対して一段と力強くなっているので、このあたりは味付けの違いもあるのだろう。(当たり前だが)モニターイヤー然とした「FitEar MH334」に対して、「FitEar TO GO! 334」はもう少し音楽を楽しく聴かせようとするポジティブさを感じる。
とにもかくにも、ユニバーサルタイプでありながらモニターイヤーのクオリティーを持つことが、「FitEar TO GO! 334」最大の魅力といっていいだろう。10万円というプライスタグはけっして手軽とはいえないが、ベースとなったカスタムイヤーに対して約3分の2となったことには十分な意義があると思う。「カスタムイヤーには興味があるけど、耳型を採ってまではちょっと」「あれをはめて外を歩くには抵抗がある」などと考えている人には、とても魅力ある製品に映るはずだ。
音質評価 | |
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解像度感 | (粗い−−−−○きめ細かい) |
空間表現 | (ナロー−−−−○ワイド) |
帯域バランス | (低域強調−−○−−フラット) |
音色傾向 | (迫力重視−−−○−質感重視) |
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