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グローバルな垂直統合へ、シャープが中国・鴻海グループと業務資本提携

» 2012年03月27日 21時16分 公開
[ITmedia]
奥田常務

 シャープは3月27日、中国・鴻海(ホンハイ)グループと戦略的パートナーシップを結び、液晶パネル/液晶テレビを含む主要事業分野において協業すると発表した。鴻海グループは、電子機器の受託製造サービス(EMS)世界最大手。シャープの開発力に鴻海の生産力を組み合わせ、ワールドワイドの競争力強化を目指す。

 27日夕方に行われた記者会見には、4月から社長に就任する奥田隆司常務が登壇。「シャープにはオンリーワン商品を開発する技術力があるが、ここ数年は円高や“六重苦”といわれる環境があり、強みを発揮することができなかった。従来のようにシャープが研究開発から設計から販売、サービスまでのすべてを手がけるのではなく、今後はバリューチェーンの中に協業を含めることが必要になる」と説明。同社がこれまで掲げてきた“垂直統合”を、密接な協力関係により“グローバルな垂直統合”に拡大するという。

 今回の提携により、まず鴻海グループの中核企業である鴻海精密工業が、シャープの堺工場で生産する液晶パネルやモジュールの半分を引き受ける。早ければ来年度(10月目標)から引き取りを開始し、最終的に比率を50%にまで高める方針。シャープはパネル製造ラインの安定的な操業が可能になる。

 これに伴い、堺工場を運営するシャープディスプレイプロダクト(SDP)に鴻海グループが約600億円を投資。SDP発行済み株式のうち、132万株を鴻海精密工業の郭台銘会長に譲渡する。SDPの出資比率は、ソニー出資分の約7%を除き、シャープと鴻海グループが同率となり、「ワンカンパニー、ワンチームとして共同運営する」(奥田氏)。

 鴻海グループが引き取る大型液晶パネルについては、中国や米国の受託生産先向けに使われる見通し。「われわれは60インチ以上の大型パネルを北米をはじめ、全世界に提供していこうとしている。今回の提携で、それをより力強く推進できる」。質疑応答では市場でシャープと鴻海グループの製品が競合する可能性を指摘する声も出たが、奥田氏は「60インチ以上の市場はまだ小さい。製品の増加により、市場が拡大するとポジティブに捉えている」とした。一方、シャープが注力しているIGZO液晶パネルの供給については、「検討段階」として明言を避けた。

 あわせてシャープは、新株の発行により鴻海グループ4社(鴻海精密工業、鴻準精密工業、FOXCONN FE、Q-Run)に対する第三者割当増資を行い、総額669億円を調達する。鴻海グループが所有する株式は、シャープの発行済み株式の9.9%におよぶが、議決権は付与せず、取締役の受け入れ等も予定していない。調達した資金は、「液晶および新規投資分に充当することで、グローバルな競争力強化と収益力アップを目指す」。具体的には、モバイル機器向けの液晶製造設備の増強、および液晶ディスプレイの新規技術導入にかかわる投資に回す見通しだ。

 両社の協業分野は、液晶パネル、液晶テレビのほか、中小型液晶応用分野など幅広い分野を含む。携帯電話でも設計の共通化や部材の共同調達、生産を行い、コストダウンと販売量の拡大を目指す。「オンリーワンデバイスとユニークな商品を送り出すことがシャープの使命。国籍を超え、お互いの強みを生かすことで、競争力のある商品に仕上げていく」(奥田氏)。

 鴻海精密工業の郭台銘(Terry Gou)会長は、会見に寄せたビデオレターの中で、「ホンハイは、いわゆるブランド企業ではないが、われわれが持つ機械、光学、電子技術と精密な製造設備を垂直統合し、活用してきた素晴らしい実績を持っている。日本がかつての電子機器やコンシューマーエレクトロニクスの製造者という役割から脱却し、高度なテクノロジー研究と国際的なブランド構築を牽引するという、新しい役割を世界に示すことになるだろう」と話した。

鴻海精密工業の郭台銘(Terry Gou)会長

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