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» 2012年05月25日 16時04分 UPDATE

麻倉怜士のデジタル閻魔帳:放送の明日が分かる “麻倉的”NHK技研公開の展示ベスト5(前編) (1/2)

恒例の「NHK放送技術研究所一般公開」(技研公開)が5月24日(木)にスタートした。今後の放送業界を占う展示内容を、AV評論家・麻倉怜士氏に解説してもらった。

[芹澤隆徳,ITmedia]

 恒例の「NHK放送技術研究所一般公開」(技研公開)が5月24日(木)にスタートした。1930年の開所以来、80年以上にわたって放送技術を牽引してきた研究所が、一年ぶんの研究成果を一般に披露する貴重な機会だ。今後の放送業界を占う展示内容を、AV評論家・麻倉怜士氏に紹介してもらおう。

ts_enma_giken01.jpg 現行ハイビジョンカメラと同等サイズになったSHVカメラヘッドと麻倉怜士氏

――そもそもNHK放送技術研究所とは、どのような機関なのでしょう

麻倉氏:技研(NHK放送技術研究所)は、放送技術の分野を専門とする国内で唯一の研究機関です。また、公共放送機関の一角として研究開発面から放送文化の発展に貢献するという役割も持っています。実際、現在のハイビジョンを世界に提案し、普及させたのは技研の大きな功績です。

 重要なのは、放送局が持っている研究機関であるということ。新しい放送技術ができても、放送してくれる局がないと広がりません。NHKとしても放送の将来を読みとり、素早く対応できるメリットは大きいと思います。

 NHK放送技術研究所の一般公開は、今年で66回目を迎えました。私は少なくとも1980年から毎年取材しているので、もう30回以上ということになりますね。日本は多くの家電メーカーが存在し、テレビ局の研究機関が将来のことを考えている、世界でも珍しい“放送の未来を描ける国”です。だから私は技研公開を毎年興味深く見ているのです。

――今年の展示はいかがでしたか?

麻倉氏:今年もたいへん面白いですね。スーパーハイビジョン(SHV:Super Hi-Vision)の実用化に向けた研究開発が着実に進んでいることに加え、放送と通信の融合したサービスを目指した「HybridCast」も昨年から大きく変わり、より魅力的になりました。

 22日に行われたプレス内覧会では、4月25日付けで就任したばかりの藤沢秀一新所長が抱負を語りました。そこで2013年頃のHybridCast、2020年頃のスーパーハイビジョン、2030年頃の空間像再生型立体テレビという具体的なスケジュールを挙げています。以前はあまり具体的な話はなかったのですが、最近は正確な数字を出すようになりました。ということは、それに向けた研究開発のロードマップが明確にできているわけです。

ts_enma_giken02.jpgts_enma_giken03.jpg 藤沢秀一新所長

 中でもHybridCastは、ネットワーク接続により、テレビに新しい魅力を加える提案。メーカーが提案するスマートテレビはネットコンテンツのプロパーですが、それとは違い、根幹には放送があります。つまり、放送自体も面白くなり、視聴者の体験も新しくなるというスマートテレビです。

 やはりテレビはソファーに深く座り、リラックスして見たいもの。つまり“リーンバック”の姿勢ですが、NHKの提案は、その姿勢のままネットワークを活用した新しいコンテンツを楽しるというものです。とても意義のあることだと思いますね。

ts_enma_giken05.jpgts_enma_giken06.jpg HybridCastを利用したスポーツ番組の連動サービス例。サッカーの試合で、手元のタブレットに両チームの布陣が表示され、文字通り手に取るように分かる。HTML 5ブラウザの搭載により、テレビ画面にも同様の表現ができるようになる(左)。ロングショットでは個々の選手の名前を表示する機能も。展示会場では「サッカーゲームみたい」と好評だった(右)

 最近のテレビ市場は、韓国メーカーの提案力がなにかと目立っていますが、日本はやはり、まとまって進めることが得意なのです。HybridCastの展示には、大手家電メーカー5社に加え、WOWOWやフジテレビといった放送局も参加していました。放送産業に関わるほかのプレーヤーが入ることで、提案力は増します。同時に、やはり中心になるのは“放送”ということも明確になってきましたね。

 さて、そんな難しい話はさておき、私が独断と偏見で選んだ技研公開展示ベスト5を挙げていきましょう。

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