――第2位は、そのものずばりのスーパーハイビジョンですか
麻倉氏:まず、スーパーハイビジョンの仕様をおさらいしておきましょう。昨年もこの連載で取り上げましたが、現行ハイビジョン放送は“肝心なところ”をアナログ時代から引きずってしまっています。それは、インタレース表示で毎秒60フレームということ。ビット深度も8bitしかないので、映像がぼけてしまったり、色の種類が足りなかったり、さらにインタレースによるちらつきが発生するといった部分です。こうした欠点を解消するのがスーパーハイビジョンなのです。
16:9というアスペクト比は現行ハイビジョンと同じですが、SHVでは3300万画素で12bitもしくは10bitのビット深度を持ち、120Hzのフレームレートにすることも決まりました。しかもそれがプログレッシブ。本当はアスペクト比もよりワイドな21:9にするべきだと思いますが、それはともかく、圧倒的なスペックであることは分かるでしょう。
また今年の大きなトピックは、符号化方式がH.264から次世代の「HEVC」(High Efficiency Video Coding)に変わったことです。年内に規格化、2013年には標準化する予定で、SHVへの採用はほぼ確定。AVC/H.264に対して圧縮効率は2倍になるそうです。実際に映像を見ると、動きの激しいシーンでは従来とあまり変わりませんが、動きの少ない場所では2倍を超える圧縮効率を達成していました。
――AVファンとしてはハードウェアの展示にも注目したいです
麻倉氏:SHV関連のハードウェアでは、まずパナソニックのプラズマディスプレイやJVCのD-ILAプロジェクターに注目が集まりました。プラズマディスプレイは60Hz駆動ですが、プロジェクターは120Hz駆動です。また120Hz収録が可能なカメラも登場しました。圧倒的な動画解像度の高さで、「動画はぼける」という従来の常識を打破できるものだと思いますので、とても印象に残りましたね。単板式にしたことで、わずか5キログラムという重量を実現したSHVカメラヘッドもあります。大きさは従来のβカムコーダーと変わらないのですから、今後はSHV撮影の機動力がアップするはず。こちらも素晴らしいと思います。
SHVコンテンツでは、シアターで上映していた「スペースシャトル 最後の打ち上げ」のほか、桜の風景、ピアノと弦楽奏者による映像もありました。これらは従来の3版式SHVカメラで撮影したものですが、一方で画素ずらしを使って撮影されたAKB 48の映像も見ることができました。NHKがアイドルを使って一般ウケする映像を制作したので、今後はさまざまな種類のコンテンツが出てくることも期待できます。
もう1つ、地味ながらも面白かったのが、「切り出しダウンコンバーター」です。SHVはフルハイビジョンの16倍という解像度がありますので、SHV映像から一部だけを切り出しても十分にフルハイビジョンとして活用できます。それをタッチパネル操作で簡単にできるようにしたのが、切り出しダウンコンバーター。例えば昨年の全日本フィギュア選手権では、8K固定カメラの映像からスケーターの足の部分だけを切り出し、足の動きだけを放送したそうですよ。
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