麻倉氏:デノンは、10万円台の「AVR-2113」、5万円クラスの「AVR-713」、15万円台の「AVR-3313」とラインアップをそろえましたが、中でも非常に感心したのが「AVR-3313」です。
通常、AVアンプの試聴テストには2つのパターンがあります。CDで2chの音を聞くこと、そしてBDを使ってマルチチャンネルをチェックすることです。AVR-3313では、まず最初のCDの音を聴いたときに感心しました。試聴に使ったのは、定番のHolly Cole(ホリー・コール)の「I Can See Clearly Now」でしたが、冒頭のベースの音がこれまでと明らかに違いました。安定した低音で量感と同時にパンチもありました。腰があるといいますか、低域の密度感が実に高いのです。
もう1つ感心したのがボーカルの切れ味。シャープなのにきつくならず、クオリティーの高さを感じさせます。従来機では間接音の広がりが少なく、すぐに消え去るような印象だったのですが、今回は間接音の“噴霧”とでも言いましょうか、濃厚な音を味わえます。実はこれ、デノンの2chアンプ製品の“S1”に通じるような音なのです。
デノンの担当者に話を聞くと、ずばり「音を良くしました」と言っていました。これまではやることが多すぎて、目前の目標を消化するのに大変だったのですが、やはり市場調査などの結果を見ると、音に対する不満の声があったそうで、会社として真剣に取り組むことになったそうです。
具体的には、2chアンプとAVアンプを兼務しているベテランエンジニアが、最初からAVアンプの音質回路の設計に携わったそうです。これまではAVアンプ専門のエンジニアが基本設計をして、最終の詰めでベテランエンジニアがチェックするというやり方を採っていたのですが、今回は部品選定からレイアウト、基本設計、そして最終的な音の仕上げまでベテランエンジニアが主体的に関わり、とくに仕上げでは低音の量感と立ち上がり感を両立させる、電源を充実させるなどオーディオ的な考え方を色濃く反映させました。
対照的に中高域ではフォーカス感と解像度を徹底的に上げ、さらに音に安定感を加える。これは低音にも通じるのですが、チャンネル間の格差を小さくするなどを目指したといいます。やはりホリー・コールで聞いた冒頭のベースが“ガツン”とくる感じ、立ち上がりの鋭さなどは、今回の施策によって音が改善された証拠であると感じましたね。
私は、ビックカメラ有楽町店で毎月1回、オーディオ機器のイベントを行っていて、6月24日(日)には「AVR-3313」を取り上げる予定です。もう5年も続けているイベントですが、実はAVアンプを扱うのは初めてです。それこそ、音が良くなったから、扱えるのです。
後編では、オンキヨー、パイオニア、ヤマハなどを解説していきましょう。
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