「レグザエンジンCEVO Duo」のDuoというのは、メイン基板の中に2つのCPUを搭載して信号処理回路を形成、高速の高画質処理を行うという意味。東芝は数年前から超解像技術の研究を進めていたが、レグザエンジンCEVO Duoのハイライトは、言うまでもなくこの4K表示用に磨き上げられた超解像技術にある。
Blu-ray Discなどの2K映像(1920×1080ピクセル)を4K(3840×2160ピクセル)表示するために用いられる超解像技術は、大きく分けると「再構成型超解像技術」と「自己合同性型超解像技術」の2つである。いかにもコムズカシイ言葉だが、おおまかにいって、前者の再構成型超解像技術は水平画素の、後者の自己合同性型超解像技術は垂直画素の補間に用いられる手法と考えてよい。つまりHDの水平1920画素を4Kの3840垂直画素に伸長する際に使われるのが再構成型で、HDの垂直1080画素を4Kの2160画素に伸長するのが自己合同性型というわけである。
55XS5でBlu-ray Discの映画を再生した場合に、4Kマスタリング作品の痕跡が如実に現れるのは、再構成型超解像技術によるところが大きいというのが同社技術陣の見解。4Kスキャン&マスタリングを経たBD作品は、4K情報、すなわちフルHDの帯域外の情報が“折り返し成分”(ノイズ)として残っている。それを再構成型超解像処理することによって、その折り返し成分をノイズとしてではなく、4Kマスタリングの残滓(ざんし)である高精細信号として画面上に復元させることができるというわけだ。
また、この再構成型超解像技術は「カラーテクスチャー復元超解像技術」を包括している。つまり、水平画素ごとに彩度検出と色情報解析を行い、超解像処理を最適化することで、高彩度部のディティール表現を向上させることができるという。
さらに、垂直画素を補間する自己合同性型超解像技術は、パターンマッチングの手法を用いた超解像技術と考えることができ、4Kマスタリングを経ていないHD収録作品でも、斜め線をよりなめらかに見せることが可能だ。65ミリと35ミリフィルム、HDカメラなどの映像素材が混在しているテレンス・マリック監督の超高画質映画BD「ツリー・オブ・ライフ」(2010年)の地球誕生シーンなどを観ると、斜め線がとてもなめらかに描写され、エッジのグラデーションの豊かさや光のコントラストの鮮やかさがよりいっそうリアルになり、こんなところに自己合同性型超解像技術が活かされているのだなと実感できた。
さて、そんな55XS5の4K映像を魅力を最大限に引き出すには、同社製Blu-ray Discレコーダーの「DBR-M190/M180」とHDMI接続することが重要だ。これらのレグザサーバーと本機をHDMIでつなぐと、55XS5 の映像メニューは自動的に「レグザコンビネーション高画質」モードに切り替わる。
55XS5の映像信号の内部信号処理は12ビットで行なわれるが、このモードに入ると、DBR-M190/M180のHDMI出力は各12ビットの4:4:4(輝度と2つの色差信号)で出力され、55XS5にとって最良の入力信号になるわけである(12ビット出力が可能な他社製BDレコーダーをつなぐ場合は、55XS5のメニューで「1080P画質モード」を「モニター」に設定すると、12ビット4:4:4キャプチャーが可能となる)。
さて、少し説明が長くなってしまったが、東芝独自の超解像技術によって、2KのBDソフトから4K高精細映像の魅力が存分に引き出せることは間違いないわけで、4Kコンテンツのパッケージソフトや放送が存在しない現状では、この恩恵はひじょうに大きいといえるだろう。
ハリウッド・メジャー系スタジオの映画BDを調べてみると、どんどん4Kテレシネ&マスタリング作品が増えている。55XS5でそれらの作品とじっくり対峙(たいじ)して、高画質がもたらす“視覚の歓び”を満喫したいものだと思う。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR