レビュー
» 2012年07月11日 14時20分 UPDATE

野村ケンジのぶらんにゅ〜AV Review:同じ振動板でも味付けが違う、JVCの「FXD」シリーズ

JVCの「HA-FXDシリーズ」は、先端素材のカーボンナノチューブを振動板に採用したカナル型イヤフォン。強じんな素材らしく、エージングには少々時間がかかったが、モデルごとに異なる性格を見せてくれた。

[野村ケンジ,ITmedia]

 JVCケンウッドから発売された「HA-FXDシリーズ」は、ミドルクラスのカナル型イヤフォン「FXC」シリーズの後継モデルだ。口径5.8ミリの小型ドライバーを採用し、耳穴の奥に配置する「トップマウント構造」を継承しつつ、ハウジングとドライバーユニットを直接つなぐ「ダイレクトトップマウント構造」へと進化した。上位モデル「HA-FXT90」で初採用したカーボンナノチューブ振動板が投入されるなど、さらなるブラッシュアップが施されている。

ts_jvc01.jpg HA-FXDシリーズ。手前の「HA-FXD70」「HA-FXD80」はステンレス製の筐体(きょうたい)を採用している

 FXDシリーズとして、今回ラインアップされたのは3種類(スマートフォン用コントローラー付きを加えると4種類)。このうち、まずスタンダードモデルの「HA-FXD60」は、「マイクロHDユニット」や「ダイレクトトップマウント構造」「カーボンナノチューブ振動板」などはそのままに、プラスティック系の筐体を採用することで、コストパフォーマンスの向上を図っている。とはいえ、「カーボンナノチューブ振動板」などのハイテク素材はそのまま。上位モデルにはないレッドやホワイトのカラーバリエーションを用意するなど、「HA-FXD60」ならではの魅力も持ち合わせている。

 一方、上位2グレード「HA-FXD70」「HA-FXD80」は、ステンレス製の筐体(きょうたい)を採用、なかでも「HA-FXD80」では、内部に真鍮製リングを配した「デュアルシリンダー構造」や「綾目ダイヤカットデザイン」など、音質、スタイルともに最上級モデルらしいこだわりが盛り込まれている。

ts_jvc03.jpgts_jvc04.jpg 「HA-FXD70」と「HA-FXD80」

 マイクロHDユニットを採用することもあるのだろう、ボディーは比較的小柄なほう。装着感も上々だ。3モデルのなかで5.3グラムと最も軽い「HA-FXD60」がいちばん軽快感があるのは確かだが、いちばん重い「HA-FXD70」でも10グラムと、まったく(重さは)気にならない。

 また、タッチノイズの少なさに関しては、なかなかに優秀だ。制振効果の高いゴム系素材と独自のブッシング形状を採用する「制振フィットブッシング」のおかげだろう、耳障りな音はほとんどない。この気づかいはありがたいかぎりだ。

中位モデルの「HA-FXD70」に注目

 さて、肝心のサウンドについて、話を移そう。

 先代「FXC」シリーズもなかなかの出来だったが、「FXD」シリーズはそれを上まわる、レベルの高いサウンドクオリティーを持ち合わせている。中でも気に入ったのは、中位モデルの「HA-FXD70」。ピュアでフォーカス感が高く、ニュアンス表現もなかなかに巧み。それでいてメリハリの良いサウンドを楽しませてくれるのだ。高域側にちょっとしたピークというか、多少のクセが見られるが、ほとんど気にならないし、モニター系のサウンドを聴き慣れた人は、かえってこういったキャラクターの方がなじみが良いかもしれない。ちなみに低域は、量よりも質といったイメージ。ボトムエンドまでしっかり伸びているので、ロック系にはピッタリのバランスだ。

 「HA-FXD80」は、シリーズ共通のダイナミックなサウンド表現はそのままに、「HA-FXD70」に対して解像度感が向上、ニュアンス表現もきめ細やかになるなど、明らかなグレードアップが果たされている。いっぽうで、帯域バランスもやや変更、低域の量感を高め、重心の低い、豊かな響きを持つサウンドとなった。そういった特長の違いもあって、「HA-FXD80」はクラシックや女性ヴォーカルとのマッチングが一段と高まったイメージだ。

 最後の「HA-FXD60」は、解像度感は上位2モデルに対してやや劣るものの、価格を考えるとこれでも十分以上のレベル。帯域バランスが「HA-FXD80」よりもさらにオーソドックスな印象となっているので、人によってはこれが一番良いと思えるかもしれない。

ts_jvc05.jpgts_jvc06.jpg 「HA-FXD60」

 3モデルとも、コストパフォーマンスの高い製品だが、それぞれに、サウンドの演出が微妙に異なっているのが面白い。是非とも試聴して、自分にとってのベストバランスを見つけ出してほしいものだ。

 最後に、今回採用されたカーボンナノチューブ振動板は、相当強じんな素材らしく、エージングにかなりの時間を必要とした。とりあえずは20時間ほど鳴らせば本来の実力を発揮してくるものの、200時間以上鳴らし続けると一段と躍動的なサウンドを聴かせてくれるようになってきたので、購入後はじっくりとつきあってほしい。

ts_jvc02.jpg
音質評価 HA-FXD80
解像度感 (粗い−−−○−きめ細かい)
空間表現 (ナロー−−−○−ワイド)
帯域バランス (低域強調−○−−−フラット)
音色傾向 (迫力重視−−−○−質感重視)

音質評価 HA-FXD70
解像度感 (粗い−−○−−きめ細かい)
空間表現 (ナロー−−−○−ワイド)
帯域バランス (低域強調−−○−−フラット)
音色傾向 (迫力重視−−○−−質感重視)

音質評価 HA-FXD60
解像度感 (粗い−−○−−きめ細かい)
空間表現 (ナロー−−○−−ワイド)
帯域バランス (低域強調−○−−−フラット)
音色傾向 (迫力重視−○−−−質感重視)

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