このようにディテールを再現できる一方で、冒頭の「統合脳内クリエーション」というキーワードにあるように、完全に肉眼で見る絵が再現されているわけではなく、「感覚に訴えることで、記憶にある情景を呼び覚ます」という点がICCのミソだ。例えばカーブを描いて雄大に流れていく川や山々の稜線、雲の流れ、朝夕の景色の変化など、すでに経験した事象がICCによって作られた絵によって呼び起こされ、よりダイナミックな風景として再現されていくわけだ。そのため、未経験の事象についてはICCの映像を見たとして、必ずしも他人と同じ感覚を共有できるわけではない。もし日本の四季の山々の風景を経験したことがない外国人の場合、ICCを見て風景から感じ取れるものは必ずしも一致しない可能性がある。これについて近藤氏は「確かにその可能性はある」とコメントしており、今後エンジンの改良で世界の人々に向けたチューニングが行われていく余地があることを示唆している。
また近藤氏は、当初販売されるICC TVのサイズは60インチに限定される点にも言及した。「人々が認識をできる限界という点で60インチがベストだと判断した。今回のIFAでは84インチの4K TVが多数出展されているが、それでは単に42インチサイズのTVを4枚並べたに過ぎない。ICCではフルHDソースを最高の状態で見せる形でチューニングされており、PC等のモニター的用途ではなく、いま手元にある動画コンテンツを最高の状態で見るために活用してほしい」(同氏)。
シャープによれば、そうした理由でマーケティング的にも製品名に「4K」を冠することはなく、あくまで「ICC技術に対応したLED TV」として扱っていく方針だという。また「ICCの映像をほかの4K TVに入力して同じ絵を再現することはできない」という話も聞こえており、60インチ以外の製品がない点については「完全にTVとICC技術が1対1でのチューニングが行われている」ことで、横展開が難しいのではとの推測もある。
なお提供開始時期だが、欧州では2013年7〜9月期を予定しているという。日本でのマーケティング展開や実際の販売時期については言及していないが、これについては10月の「CEATEC JAPAN」に合わせて何らかのアナウンスがあるだろう。
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