外観上の大きな変化としては、メインユニットの両端に6.5センチ径のスピーカーユニットが追加されたこと。カタログ上は低域を受け持つウーファーとなっているが、ステレオ再生時を中心に音の定位が向上し、小径のビームスピーカーとサブウーファーユニットの間の音域を受け持つことで音域のつながりが非常に良くなる。音楽再生時を中心にピュアオーディオ的な音質面のメリットが大きいようだ。実際、音楽を中心に2チャンネルのステレオソースをサラウンド効果なしで再生する場合には、その存在意義がはっきりと分かるレベルにあった。このあたりは後編で詳しく触れるつもりだ。
YSP-2200でも好評だった、上面のフルフラット形状は維持された。アルミヘアライン風の加工を施された黒いキャビネットは、上品ながらもことさら存在を主張することはない。高さは86ミリに抑えられており、フレーム部がどんどん細くなっている最近の薄型テレビにも対応できるレベルだ。フロントサラウンドシステムは良くも悪くも大画面テレビの前では“名脇役”でなければならないが、その位置付けをよく分かっている証拠だろう。
一方のサブウーファーもスリムな縦/横両用タイプで、縦に設置する場合は145(幅)×350(奥行き)ミリのフットプリントしかとらない(高さは446ミリ)。横置きの場合なら、435(幅)×146(高さ)×350(奥行き)とAVラックにも無理なく収まるサイズだ。それでも収まらない場合もあるだろうが、今回はワイヤレス化によって部屋のどこに置いても良いことになった。もともと指向性のないサブウーファーだから、その効果は変わらないのだ。
なお、YSP-3300とYSP-4300は、前者がビームスピーカーが16個、後者が22個という点が異なるほか、後者では筐体(きょうたい)の幅を生かして内部キャビネット容量を大きく確保。ビームスピーカーの数に合わせるようウーファーユニットの出力も強化されている。またYSPシリーズはもともとビームスピーカーを4個単位で制御していたが、YSP-4300では筐体幅を生かすためにこれを変更したという。このあたりも、並々ならぬ音へのこだわりを感じる部分だ。
では、フロントサラウンドシステムとしての実力はどうだろう。ヤマハ製品がフロントサラウンドシステムの中でも常に上位の人気を保っている理由は、バーチャルではない“リアル”なサラウンドを実現していることだ。メインユニットに並べられた小径のビームスピーカーは、強い指向性を持って各チャンネルの音を放出し、これを効果的に壁に反射させることで、あたかもリアやサイドのスピーカーが存在するかのような効果を生み出す。単にエフェクト効果で臨場感を作り出すことの多い低価格フロントサラウンドシステムと明確に異なる部分だ。
ただし、壁の反射を利用するという仕組み上、重要になるのが設置する部屋の特性だ。そこでYSPシリーズに搭載されているのが、ビームスピーカーの調整を完全に自動化してくれる「インテリビーム」だ。付属の測定用マイクを視聴位置に置き、調整を実行するだけで3分程かけて自動調整を行ってくれる。実際にビームスピーカーから送り出す角度を変えながら音を出してマイクで集音し、調整を行うので部屋の形状・障害物の存在も全て含んだ上での自動調整。その際、人も部屋から出るように指示が出る念の入れようだ。
インテリビームの効果は絶大だ。今回は、視聴環境として理想的なオーディオルームとごく一般的なマンションのリビングルームを使用したが、差異は感じるものの、どちらでも高い臨場感が得られた。とくにリビングルームは、視聴位置が背面の壁に非常に近く、左側面は窓とカーテン、右側面はキッチンという、反射を利用するフロントサラウンドシステムには劣悪ともいえる環境だったが、左右の音のバランスに違和感を感じないサラウンド効果をしっかり得ることができた。意図して環境を選んだわけではないが、ちょっと驚くレベルだったことに間違いはない。
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