とんでもないアイデアで音を変えた――“カナル型は苦手”の潮晴男氏も納得したJVC「FXZシリーズ」(3/3 ページ)

» 2012年11月20日 10時00分 公開
[潮晴男,ITmedia]
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 最初に掛け心地が良いと感じた。カナル型が苦手だったぼくに何の苦痛もなく、使える製品は初めてだ。羽田から広島に行く国内線のヒコー機の中でも使ってみたが、まずL、R表示が大変分かりやすい。カナル型に限らずこの表示の分かりにくい製品は結構ある。形状から判別してL、Rにつけなさいと言うことなんだろうけど、そんな都合よくはいかない。そうした点にも作り手の思いやりがしのばれる。

L/R表示は分かりやすく、表示の部分をつまめば、そのまますっと耳に入る。実際に装着してみると……あれ? 実にスムースで掛け心地が良い

 そして耳殻へ装着する際のタッチがまた絶妙なのである。私がカナル型が苦手だった要因の1つに、装着時の挿入感の悪さがある。ところがこのモデルにはそれがない。実にスムースでしかも耳殻に挿入する際、手でL、R表示の部分をつまめば、そのまますっと装着できるのだ。イヤパッドはSML用意されているが、ぼくは標準用として取り付けられていたMサイズでそのまま使えた。

 ケーブルがまとわりつかないのもよい。カナル型に限らずコンパクトなヘッドホンの中には、音は良いんだけど、出したりしまったりする際の使い勝手が良くない製品があるが、このモデルではそうしたこともなかった。カナル型の場合圧倒的にアウトドアで使うものだから、ケースからの出し入れも多いだろうし、iPodやウォークマンとの接続を頻繁におこなうので、そのたびにケーブルがぐちゃっりするようではほんとうに困りものなのである。収納する際は4本の指にぐるぐると巻きつけるだけで、ケースサイズになるのもよい。

HA-FXZ200とHA-FXZ100、それぞれの音

 音質については三浦がこんなことを言っていた。「低音域の豊かさがこのモデルのテーマでもありましたが、質感を伴わないと意味がありません。例えばベースだったらウッドベースかエレキベースなのか、ドラムならサイズや皮の質感の違いまで再現できたと思っています」。

 そんなことを思い浮かべながら試聴は愛用のヘッドホンアンプを用いておこなった。というのもHA-FXZ200は、音質最優先の設計をおこなっているため、若干能率が犠牲になっている。このモデルで唯一課題が残るとすればこの部分だが、ドライバユニットを3基も搭載すると駆動するアンプにもそれなりの出力が要求される。ヒコー機の中でもごく一般的な使用状態なら何の不満もないが、もう少しエネルギー感がほしいという時には、やはりヘッドホンアンプと組み合わせた方がいいようだ。というわけで三浦には次なるリクエストとして、このヘッドホンに見合う高性能なJVCケンウッド製のヘッドホンアンプの早期発売をお願いしたのである。

 ポール・サイモンの「ライブ・イン・ニューヨーク・シティ」からアンコールの「コダクローム」を聴いてみる。会場となったウエブスター・ホールのライブネスも良く伝えるが、なんといっても切れの良いベースラインとバスドラムが堂々としている感じが頼もしい。そしてポールのボーカルにそうした音が被ることなくクリアなのもうれしくなる。

 姉妹機のHA-FXZ100も試聴してみた。基本的な音の印象は、HA-FXZ200の相似形だ。いくぶんおとなしい感じにも聴こえるが、ベースラインはこのモデルも負けてはいない。確かにタイトな切れ味は一歩譲るかもしれないが、このゆったり感も捨てがたい魅力だ。開発にあたって三浦は、多くのアイデアを詰め込んでまずHA-FXZ100を作った。だからHA-FXZ100は1つの完成形であり、さらなる音質を目指してHA-FXZ200を開発したときのリファレンスでもある。その風格を十二分に感じさせてくれる音を聴かせてくれた。

「HA-FXZ100」。確かにタイトな切れ味はHA-FXZ200に一歩譲るかもしれないが、このゆったり感も捨てがたい魅力

 続いて最近私が良く聴いているジャッキー・エバンコの「ドリーム・ウィス・ミー・コンサート」から「トゥ・ビリーブ」を再生してみる。フロリダのジョン&マーベル・リングリング博物館の野外で行われたライブステージを収録したアルバムだが、オープンエアの感じがとてもよく出ているし、ジャッキーの透明感あふれるボーカルとバックのオーケストラの弦楽器の音色の多彩さに感心する。スケール感もあり低音弦の表現もしっかりとしている。HA-FXZ100も色付けが少なく声の表情の豊かさに姉妹機らしさを感じさせるが、このアルバムだとやはりFXZ200の方が一枚上手という感じで、クオリティー感の高いサウンドを聴かせてくれた。


 三浦に製品開発にあたって、自身はどんなソフトを使ったのかたずねると「ジャズの女性ボーカルが多かった」と明かしてくれた。それが冒頭の一文でもある。彼は根っからのオーディオ・マニアだが、だからと言って音楽をおろそかにするようなエンジニアではない。オーディオ・マニアだからこそ、こんな素晴らしい方式を生み出し、音楽ファンの一面が、音が活き活きと鳴るような製品を作り上げたのである。

 低音は音楽のファンダメンタル成分を受け持つ大切な要素だからこそ、彼はここまで攻めの姿勢で製品を作り上げたわけだが、けっして低音偏重のヘッドホンでないことはお分かりいただけたことだろう。低音の上に成り立つ音とのバランスが整ってこそ、音楽をより深く聴くことが出来る。彼と同じようなおじさんのオーディオ・ファンから女性の音楽ファンまで、良い音で音楽を楽しみたいという人に使っていただきたい製品である(文中敬称略)。

型番 HA-FXZ200 HA-FXZ100
型式 ダイナミック型
出力音圧レベル 96dB/1mW
再生周波数帯域 5〜2万6000Hz 6〜2万6000Hz
インピーダンス 16オーム
最大許容入力 50mW(IEC)
重量 約11グラム 約10グラム
コード 1.2メートルY型、3.5ミリ金メッキステレオミニプラグ
付属品 シリコンイヤーピース(S、M、L)、コードキーパー、クリップ、キャリングケース
価格 オープン(2万5000円前後) オープン(1万8000円前後)
発売日 11月下旬
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提供:株式会社JVCケンウッド
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia LifeStyle 編集部/掲載内容有効期限:2012年12月19日