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“4K Inter BEE”から最新BDレコーダーの優れた機能まで、4K最新事情麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(2/4 ページ)

» 2012年11月29日 17時26分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

麻倉氏: 国際規格の「Ultra HD」でも、従来は8Kがメインだったのに対し、第1段階として4K、第2段階で8Kという道筋ができました。これが注目の動きの1つめです。いきなり8Kではなく、まず4Kを普及させるという、現実的なロードマップが見えてきたのです。

 Inter BEEは、5年くらい先のトレンドを反映するといわれますから、今後に期待できます。もっとも、数年前は3D一色だったこともありますので、放送業界は見限ることも早いようですが……。

4Kホームシアターの新しい潮流

――4Kホームシアターの新しい動きとはなんでしょう。

麻倉氏: 4Kホームシアターの分野で新しい動きが出てきています。1つはJVCが4Kプロジェクターの第2弾として、「DLA-X95R」など3製品を発表したこと。新製品はすべて4K対応で、さらに映像表現という面で画期的な性能と機能を持っています。

JVCの「DLA-X95R」は105万円で11月下旬発売(左)。「DLA-X55」は63万円(右)

 振り返ると、昨年は4K機器もデビューの年ですから、JVCやソニーはまず4Kのすごさをアピールしました。例えば、4KマスターをダウンコンバートしたBDソフトには、4Kの痕跡が残っています。2Kでは見えませんし、4K対応でも普通のやり方ではボケるだけですが、超解像技術を組み合わせることで4Kの痕跡が見えてきます。ソニーもDRC系超解像入れて4倍密を提案しました(→“4Kの痕跡”とは? ソニーとJVCのイベントで気づいた効果)。

 でも昨年、私はメーカーに指摘しました。旅番組のステディカム撮影などはパンフォーカスで問題ありませんが、映画はそうではありません。映画というのは、監督がボカすところはボカし、見せたい人物にフォーカスをあてるフォーカス操作を行います。しかし、超解像がすべてにかかっていると、画面のすべてがくっきりと見えてしまいます。例えば「サウンド・オブ・ミュージック」のドレミの歌のシーン。背景の山やお城までシャキッとしてしまうのはやっぱりおかしいでしょう?

 そこでJVCは今回、映像解析技術を進化させ、ボケているところには超解像はかけず、フォーカスが当たっているところにだけ超解像をかけるといった選択的な処理を盛り込んだのです。具体的には、従来は4×4画素の16画素で解析していたのに対し、今回はさらに大きく16×16画素とし、ボケを判別します。昨年は周波数特性の高域と低域の判別が2パラメーターしかなかった。今年はそれを8分割して、ボケてるから少しボケてるとか、きめ細かく判断するようになりました。その分析結果が設定画面でも分かります。

 JVCは、コンテンツと真摯(しんし)に向き合い、表現上の新しい提案をこれまで何回となく行っています。かつて、画が分かるエンジニアがイマジカと協業して、フィルムを写すときの減色混合の色をビデオの加色のRGBにて出す仕組みを開発したこともあります。今回の処理はホームシアターにおける映像再現史の中でも特筆すべき成果といえるでしょう。「精細にしない精細感」、「精細にする精細感」の違いを瞬時に判別する仕組みを作ったのですから。

Multiple Pixel Controlで滑らかなスキントーンやデフォーカス感も出す。右は解析画像

 4Kの時代に入ってから、それまで画質の評価基準だったコントラストやガンマ、色再現などに加え、新たな概念として精細感が極めて重要になりました。これまではフルHDとして情報量が決まっていたので、あまり精細度という概念はありませんでしたが、4Kではコンテンツが持つ本当の情報を表現できるようになったのです。JVCはさらに、その精細感にメリハリを付けられるようにしました。これが第2世代4Kの新潮流の1つです。

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