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琥珀色のパリを見事に描き出したJVC「DLA-X75R」の「フィルムモード」山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(2/2 ページ)

» 2013年01月23日 14時01分 公開
[山本浩司,ITmedia]
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 4Kプロファイルを「高解像度」に設定して、「アラビアのロレンス」「イクリプス」「紳士は金髪がお好き」「泥棒成金」「トゥルーグリット」など4Kマスタリング、4Kカメラ収録のBD映画を観てみたが、その4Kハイレゾ効果は目覚ましく、DLA-X70Rとは段違いの画質に仕上げられていることが分かる。一方ハイビジョン収録の音楽ライブやDVDの映画作品なども、4Kプロファイルを「HD」や「SD」に設定することで、予想以上の高精細化効果が得られることが分かった。なるほどこのプロジェクター、驚くほどよくできている。

 また、そのMPCレベル、すなわちどの帯域成分を重視して高精細化したかが一目で分かる解析画面の表示機能も新たに加えられた。エンハンスやスムージングを行なった場所を静止画面上で白やマゼンタ(赤紫)で表示するわけだが、実際に4Kプロファイルの設定を「フィルム」「高解像度」「HD」「SD」と切り替えていくと、その白やマゼンタで表示される面積や場所が変わっていくことが分かり、じつに面白い。

オリジナル映像(左)と解析画面(右)

 さて、ぼくは2008年発売の「DLA-HD750」以来、3年続けてJVC製プロジェクターを使い継いできた。その最大の理由は、フィルム映像とは何かを真摯に解析、その成果を色再現とガンマカーブの設定に応用した「フィルム」モードの提案に心ひかれてきたからだ。今回のDLA-X75Rではその「フィルム」モードに新たにカラープロファイル「フィルム3」が加わった。これは色情報が豊富な往年の3色法テクニカラーの発色をシミュレートしたものだという。ゴージャスな色再現が魅力の3色法テクニカラー映画Blu-ray Disc「紳士は金髪がお好き」をこの「フィルム3」に設定して観ると、マリリン・モンローがまとった真っ赤なドレスなどが濃厚かつヌケよく表現され、そのむせかえるようなリッチな色の魅力に一発でノックアウトされてしまったのだった。

BD「ミッドナイト・イン・パリ」。3990円で販売中(発売/販売元は角川書店、JAN:4988111143006)(c)2011 Mediaproduccion, S.L.U., Versatil Cinema, S.L. and Gravier Productions, Inc.

 また、フィルムのS字ガンマカーブをトレースし、色温度設定を色の分布特性に優れたキセノンランプをフィルムに当てた状態をシミュレートした「フィルム」モードならではの魅力を実感したのは、ウディ・アレン監督の映画「ミッドナイト・イン・パリ」のBDだった。この作品は、ヘミングウェイやダリ、ピカソなどが旺盛な芸術活動を行っていた1920年代のパリに憧れる主人公のハリウッドの脚本家が、その時代にタイムスリップして巻き起こすドタバタを描いた風刺の効いたアレンらしいコメディ映画。ガス灯に照らしだされた1920年代のパリの夜、その琥珀色に彩られた幸福色をDLA-X75Rの「フィルム」モードはみごとに再現するのである。

 試みにマスターモニター近似の「THX」モードに切り替えてみると、確かにすっきりとした透明感の高い画調なのだが、「フィルム」モードのような濃密な琥珀色と人物の陰影、立体感を味わうことができないことが分かる。もっとも100インチ程度の画面サイズで観るときは、コダックのポジフィルムのガンマをそのままトレースした「シネマ1」ではS字カーブがきつく映像にメリハリがつきすぎる印象。ややそのカーブをやわらげた「シネマ3」がいちばんしっくりくる感じだ。


 映画を観るためのプロジェクターとして色再現と階調表現を進化させながら、果敢に4K高精細化に挑んだDLA-X75R。いまもっとも魅力的なプロジェクターの1つといっていいだろう。ひとつ残念なところがあるとすれば、画素ずらし方式を採った製品だけに、4K入力に対応していないこと。昨年はソニー「BDZ-EX3000」やパナソニック「DMR-BZT9300」のような、とても素晴らしい4K出力を持つBDレコーダーが登場してきただけに、やはりリアル4K表示可能な製品を使ってみたいという気持も。なお、価格差16万円で上位機「DLA-X95R」がラインアップされているが、これはDLA-X75Rの選別品という位置づけ。実質的な違いはコントラスト比のみ(DLA-X95Rが13万:1で、DLA-X75Rが9万:1)。完全暗黒が実現できる迷光対策に万全を期した部屋ではその差が認知できると思うが、そうでなければDLA-X75Rでじゅうぶんというのが筆者の感触だ。

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