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3DにBDオーディオ、ブルーレイ大賞が示したBDの新しい可能性(前編)麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(3/4 ページ)

» 2013年03月07日 14時38分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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ベスト高画質賞・TVドラマ部門

「スパルタカス ブルーレイBOX」(発売元・販売元:20世紀フォックスホーム エンターテイメント ジャパン株式会社)

麻倉氏:スパルタカスはHDビデオカメラ撮影の作品です。これまでのテレビドラマ、とくにハリウッドの大手スタジオが撮影するものは、どちらかというとビデオカメラで撮影していてもフィルムらしい質感を追求する傾向がありましたが、今回はビデオカメラならではの鮮明さとこってりとした表現性を100%表に出すことで、独自の境地を開きました。高いコントラストとシャープネス。一言でいえば、ハイパワーな映像です。そこが評価されたポイントです。

 スパルタカスはローマ時代の剣闘士の話です。その内容に合った濃密で明確な画調になっていました。剣闘士の肉体や衣装を非常に生々しく、克明に描いています。まさに「筋肉描写力」の勝利です。審査員からは「BDの階調性を生かし切った画質技術に圧倒された」というコメントもありましたが、とくに“内容を生かす画質”という点が評価されたのです。

 惜しくも受賞を逃したノミネート作には、「NHK大河ドラマ 平清盛 完全版 第壱集」(発売元:NHKエンタープライズ、販売元:ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント)がありました。大河ドラマはNHKの「画質の実験室」という側面があり、これまでもフィルムらしさやビデオっぽい画質で作られた作品があります。今回はフィルムらしいテイストもありながら、同時にビデオらしい鮮明な画質が特長でした。

 もう1つのノミネート作「パーソン・オブ・インタレスト」(発売元・販売元:ワーナー エンターテイメント ジャパン株式会社)は、コントラストの高さと色再現性が評価されました。メイクや照明までを合わせ、トータルな絵づくりが評価されたポイントです。

ベスト高画質賞・企画映像部門

「Healing Islands OKINAWA4〜石垣島〜」(発売元・販売元:ビコム株式会社)

麻倉氏:企画映像部門は、今回もビコムでした。5回連続の受賞となりますので、個人的には少し多すぎるかとも思いますが、審査会では1発で受賞が決まりました。それはビコムの画質が圧倒的だからです。

 ビコムは、もともと鉄道をテーマにした映像作品を作ってきたため、画質よりむしろアングルに凝る会社です。しかし年に1回だけ、6月に沖縄、および周辺諸島に赴いて徹底的に画質にこだわったプロジェクトを行うそうです。なぜ沖縄かというと、福岡の本社ら近いという理由もありますが、海、山、陸の映像素材が山盛りだからです。そこでパナソニックのフルHDカメラをチューンし、解像感をぎりぎりまで上げるというチャレンジをします。今回は設定だけではなく、カメラ内部の調整まで行いました。

――どのようなチャレンジでしょう

麻倉氏:例えば、明るい場面なら白トビが起こるかどうか、ぎりぎりの線を探るわけです。暗部なら、黒を沈めつつ、色が抜けないようにします。輪郭は強調しないのですが、その中身が精細で自然な輪郭強調になるように調整します。

 そうした調整により、一見4Kかと思うくらい精細でビビッドな風景映像が撮影されました。毎年のように受賞する“定番”の制作会社ですが、定番になる会社はそれだけの実力を持っているということですね。

 今回、企画部門はあと1つしかノミネートがありませんでした。それはNHKエンタープライズの「NHKスペシャル 仁淀川 青の神秘(発売元:NHKエンタープライズ、販売元:ポニーキャニオン)」です。四国を流れる仁淀川の四季を描いた自然ドキュメントで、冒頭のカワセミが水中に突っ込み虫を捕る場面を高速度カメラで捕らえたシーンは個人的にも好きです。清流の流れを眼前に体験するようです。ただし、シーンによってカメラのクオリティーが異なり、画質に統一感がなく、カメラが切り替わったときに違和感が残りました。

 とはいえ、5年連続でビコムが受賞しているので、来年はほかの会社もがんばってほしいです。それから、ビコムにはほかのジャン((沖縄以外)や4K撮影にもトライしていただきたいと期待します。

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