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3DにBDオーディオ、ブルーレイ大賞が示したBDの新しい可能性(前編)麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(4/4 ページ)

» 2013年03月07日 14時38分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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ベスト高画質賞・アニメ部門(洋)

「メリダとおそろしの森」(発売元・販売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社)

麻倉氏:ビコムを定番と言いましたが、こちらは本当の“定番”です。CGアニメはピクサー/ディズニーの独壇場ですね。ほかのノミネート作で評価が高かったのはパラマウントの「マダガスカル」で、画質からいうとこの2つが圧倒的に良かったと思います。マダガスカルの良さは原色の良さ。最初に見たときは「ディズニーのお株を奪うか」と思ったのですが、やはり「メリダとおそろしの森」はその上をいっていました。

 まず、立体感の再現が違います。今回は2D版が対象でしたが、奥行きや登場人物個々の立体感が圧倒的です。画質のキーワードは“精細感”と“解像力”。陰影のつやっぽさが印象的な、情報量の多い繊細な描写です。

 もう1つ印象的だったのは、メリダが弓を射るシーンでのパースペクティブの描き方、メリダの立体感などがBDを通じて豊かなグラデーションで再現され、まるで3Dをほうふつとさせる立体感を感じます。もちろん、3Dバージョンの臨場感もすばらしいです。

 画質的にはマダガスカルも高く評価されましたが、やはりトータルでは「メリダとおそろしの森」に軍配が上がる、というのが審査委員会の総意でした。

ベスト高画質賞・アニメ部門(邦)

「コクリコ坂から」(発売元・販売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社)

麻倉氏:アニメ部門の邦画は接戦でした。ノミネート作の中では、とくに「ジャイアントロボ THE ANIMATION 地球が静止する日」(発売元:株式会社フロンティアワークス、販売元:株式会社メディアファクトリー)の評価が高かったです。ジャイアントロボはレストア作品ですが、レストアという限定された評価ではなく、びっくりするくらいうまいのです。今のCGアニメと違い、適度に輪郭が減衰して目にやさしい、良い意味で快適な映像です。さらに色再現がとてもいい。ジャイアントロボの立体感などを見ても、とても30年も前の作品とは思えません。

 「映画 けいおん!」(発売元:TBS・桜高軽音部、販売元:ポニーキャニオン)は、画質うんぬんより、「キャラクターがいいね」ということで……。ほのぼのとした女子高生の日常を描くトータルの作品性が評価されました。

 受賞した「コクリコ坂から」も定番のようなものですが、ジブリ作品の圧倒的なクオリティーはやはり毎年変わりません。手書きの背景とデジタル制作のキャラクターが融合し、ナチュラルで同時にリッチという点がすばらしいところです。細部まで情報があるが、ノイズは少ない。審査員の評価が高かったのは、「安心して見られる映像」という安定感でした。制作者のこだわりがはっきりと分かります。

 ジブリは以前、「崖の上のポニョ」でグランプリを受賞しましたが、いずれの作品も“ジブリトーン”ともいうべき独自の画調を維持しつつ、それぞれに違う切り口のトライをしている点も評価が高いですね。個人的には昨年末にリリースされた「魔女の宅急便」の、手描きアニメの暖かさが好きです。

――後編では、「ベスト高音質賞」「ベストレストア/名作リバイバル賞」「ベストインタラクティビティ賞」、そして「グランプリ」受賞作について聞いていきます

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