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3DにBDオーディオ、ブルーレイ大賞が示したBDの新しい可能性(後編)麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(2/4 ページ)

» 2013年03月11日 09時00分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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ベスト高音質賞・映像部門

「フローズン プラネット BBCオリジナル完全版 Blu-ray BOX」(発売元・販売元:エイベックス・マーケティング株式会社)

麻倉氏:この部門のノミネート作は、映画も含めてどれも傑作でした。例えば「アーティスト コレクターズ・エディション」(発売元:ギャガ株式会社、販売元:株式会社ポニーキャニオン)は、かなり音にこだわった作品。映像は白黒ですが、音の表現がすばらしい。一般的な映画音楽とはまったく違い、まるでクラシックのコンサートを聴いているような音でした。映画音楽は感情を高める側面がありますが、アーティストの音は、まるで無声映画に生のオーケストラを付けたかのよう。音色の繊細さとかクリアさ、音楽的な響きがとても魅力的でした。

 対して、「猿の惑星:創世記」(発売元・販売元:20世紀フォックスホーム エンターテイメント ジャパン株式会社)は、典型的な映画の音です。橋の上でパトカーを猿が襲撃するシーンでは、騒ぎ声や爆発音といったサウンドエフェクトとともに音楽が映像を引き立てます。ハリウッドの定番的な音楽の使い方といえますね。

 そんな良作揃いの映像部門ですが、中でも圧倒的に良かったのが、「フローズン プラネット」でした。最新ロスレス圧縮技術のドルビーTrueHD“アドバンスド96kアップサンプリング”を採用した初めてのテレビ番組です。この技術は、ドルビーが提携している英Meridian Audioの技術を採用したもので、コンテンツ制作工程で生じるデジタルノイズ(プリシュート:波形の立ち上がりで音が重なる現象がD/A、A/Dをくり返す内に発生する)を抑え、高品位なエンコードを可能にします。

 BBCのアースシリーズはもともと音楽に力を入れていましたが、今回はテレビ番組でありながら実に映画的な雰囲気です。吹き荒れるブリザードの低音や、氷の割れる音なども非常になまなましく、さらに高品位な音楽が極地のドラマを盛り上げます。受賞は当然の結果でしょう。

ベストレストア/名作リバイバル賞

「アラビアのロレンス 製作50周年記念 HD デジタル・リマスター版 ブルーレイ・アニバーサリーBOX」(発売/販売元:株式会社ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)

麻倉氏:最近は制作50周年や60周年といった、かなり古い映画のリストアが増えました。それでもオリジナルネガさえ残っていれば、最新技術と熱意で復活させることができます。今回ノミネートされた3つの作品はどれも素晴らしいものでした。受賞は逃したものの、「ブリキの太鼓 ディレクターズ・カット」(発売元:株式会社IMAGICA TV、販売元:株式会社角川書店)は日常生活を描いた作風にあった色使い、「雨に唄えば 製作60周年記念リマスター版」(発売元・販売元:ワーナー エンターテイメント ジャパン株式会社)はテクニカラーの絢爛豪華な色とコントラストが楽しめます。

 しかし、審査員は満場一致で「アラビアのロレンス 製作50周年記念 HDデジタル・リマスター版」(発売元・販売元:株式会社ソニー・ピクチャーズエンタテインメント)の受賞を決めました。この作品は、65ミリオリジナルネガを8Kでスキャンし、4Kで修復したもの。オリジナルネガのダメージが大きかったため、画面を4分割して総勢100名のスタッフが約1年をかけてレストアしました。

 評価のポイントは驚異的な描写力です。例えば、ロレンスの言葉に「砂が好きだ」というものがありますが、これまでのLDやDVDでは言っている意味は分かってもそれだけでした。しかしレストアによって砂の一粒一粒まで描写できるようになると、その言葉が真に迫ってきます。高い画質によって物語が深く描かれることが分かるかと思います。

 一方、残念だったのは「タイタニック」です。今回は3D部門(ベストBlu-ray 3D)に出品されましたが、実はこれもレストア。しかもジェームス・キャメロン監督が威信をかけてレストアした素晴らしいものですが、出品部門が違いましたね。

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