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DRC、ICC、そしてISVC――アイキューブド研究所、近藤哲二郎氏の超発想力麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(2/3 ページ)

» 2013年04月30日 17時02分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

麻倉氏: データベース方式という基本は共通ですが、実際には目指すところは大きく異なります。DRCはあくまで信号レベルの処理で、目標はハイビジョンカメラの出力信号(HD撮影画質)。SDカメラで撮影したものをハイビジョンカメラで撮影したかのような信号に変えることであり、そこにはICCの「見た人がどう感じるか」といった視点はありませんでした。

 ICCでは、「もっと人に感動を与えられないか?」という新しいチャレンジを加えました。本物に近い映像で見せるためには、そもそもカメラの出力信号をリファレンス(基準)にしてはだめです。光学的に、電気的に歪んでいるからです。われわれは物体に反射した光を見てそれを認識しますから、それに近い光をテレビ画面から感じとることはできないか。光クリエーション技術という呼び方はそのことを意味しています。実際の光の反射に近い映像を作り出すことで、人は物体や物体と物体の距離感などを認知しやすくなります。

2月に行われた技術発表会のようす

400インチスクリーンに映し出された富士山。フルHDカメラで撮影したものをISVCで処理し、4Kプロジェクターで投映したもの(左)。デモ用の4Kプロジェクター(右)

麻倉氏: もっとも、近藤さんから「脳の負担を軽減する」という話を最初に聞いたときは、なんのことかさっぱり分かりませんでしたが……。芸能山城組の山城先生が、2Kと4Kの違いとして、「見た人のα波の出方が違う」と話していましたが、近藤さんの考えもそれに近いのではないでしょうか。

 現在、テレビメーカー各社が超解像技術の進化に取り組んでいます。映像を見ると、どの技術でも情報量は増えますが、奥行き感や空気感ではICCがダントツです。では、ICCやISVCでは具体的にどのような処理を行っているのでしょうか? 大方不明です。誰もついていけません。私もDRCの頃はついていこうと試みましたが、途中であきらめてしまいました。

 2月のISVC発表会でも、報道陣の質問と近藤さんの回答がかみ合っていないと思ったでしょう。ICCやISVCは、あまりにも多くのことをやっているため、かいつまんで説明することが難しい。そのため概念的な説明になり、話がかみ合っていないように感じてしまうのです。

――なるほど、あきらめがつきました

麻倉氏: いやいや、あきらめるのは早いです。その後、食いついて聞き出したことを列挙します。

1.「アップコンバート+超解像の過程を通じて光をクリエイトすること」。つまり電気の伝達関数をキャンセルし、ピュアな光世界の表示を追求。その手法はICCと基本的に同じです。

2.奥行き感の表現技術。DRCでは、ものの奥行き方向の位置にかかわらず、同じように波形変換していたが、ISVCでは目の水晶体が奥行き感を感じるのと同じ意味で、手前と奥の物体に違うフォーカス処理を与えています。その物体の意味を捉える(木だから木らしく)のではなく、あくまでも電気的な波形処理で奥行き感を表出させます。

3.アナログ的な発想。デジタルは離散、アナログは連続。目が物を認識する過程では、目があちこちスキャンし、光量を絞りで調節し、水晶体でフォーカスを調整します。これはアナログ(連続)的な筋肉運動です。このような目のアナログ運動が画像にエンベット(組み込み)されているとして、それを再現するような画像処理を行います。

4.大画面とプロジェクターでなければならない。臨場感は、目を一点に合わせずに画面のあちこちをキョロキョロと、連続的スキャンすることで感じます。小さな画面では目玉を動かす必要はないので、臨場感とは無縁。この理由から、大画面でなければなりません。

----そうなのですね。では、ISVCの映像について評価をお願いします

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