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“クールジャパン”最前線、テレビ局のコンテンツ輸出に変化の兆し麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(3/3 ページ)

» 2013年05月14日 14時59分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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麻倉氏: 同様の試みは昨年秋に開催された「mipcom」(miptvの姉妹イベント)でも行われ、そこで手応えを感じたそうです。もっとも前回はディナーパーティースタイルで、あまり成果には結びつきませんでした。そのため今回はテーブル形式ではなく、開幕前日のフォーマットだけの専門コンベンションにて発表会のスタイルで実施しました。NHKや在京・在阪キー局8局がプレゼンを行い、フォーマット輸出を訴えたのです。

 中国や韓国の団体も同様に合同プレゼンは実施しましたが、局ごとの時間は決まっておらず、言葉も中国語や韓国語だったそうです。対して日本は1局あたり5分間と決め、そのうち半分を現地の言葉(仏語)でプレゼンしたためことが成果を上げたようです。主催者で、このイベントの実現に尽力した、リードミディムのmiptvディレクター、テッド・バラコス氏は、「前日の韓国のフォーマットイベントより、訴求力は強かったし、日本コンテンツの優秀さを、世界のバイヤーに訴えることは成功したとみています」と話していました。

 今回、NHKエンタープライズは、「伝えてピカッチ」(ひらめき力を競い合うゲームバラエティー)、日本テレビは「世界一受けたい授業」の「アハ体験」(脳科学に基づくトレーニング)、テレビ朝日は「クイズ!スピードキング」、TBSはアスリートと素人が対決する「炎の体育会テレビ」がテーマでした。このあたりはどこの国でも通用するものです。また、会場からの拍手が多かったのは、朝日放送の「世界の村で発見!こんなところに日本人」、テレビ東京の「世界で働くお父さん」のような“人情もの”でした。

朝日放送「世界の村で発見!こんなところに日本人」、テレビ東京「世界で働くお父さん」のプレゼンテーション

麻倉氏: 「世界で働くお父さん」は、海外に単身赴任しているお父さんに子どもが会いにいくという番組です(現在は放送終了)。お父さんたちは、タイで工場を建設していたり、ブータンで橋の架け替え工事に従事していたりと、取材だけでも大変です。しかもお父さんには内緒で子どもたちが訪れるため、会社の広報を通じて経済番組の取材ということにします。そもそも、そういったお父さんを探すところにもノウハウがありますから、番組コンセプトだけではなく、取材の進め方までを含めてフォーマットになるのです。やはり反響は大きく、テレビ東京の場合は4ヵ国から反応があったと聞きました。

 注目すべきは、日本の放送局がまとまってプレゼンを行ったことで、それまで付き合いのなかった海外の放送局や関係者が来てくれたということ。とっかかりとしては重要です。今回のmiptvにはこうした新しい動きがあり、政府も補正予算を付けて対応しました。これまでは“かけ声”ばかりで民間の努力しかありませんでしたが、新しい流れが出てきたことは、文化輸出という今後のテーマに対して大きなヒントを与えたのではないでしょうか。展示会場ではやはり中国や韓国のが存在感が際立っていましたが、日本のテレビ局も独自の切り口を提供することで、今後は番組やフォーマット輸出が広がっていくと思います。  

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