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東芝「65Z8X」が描き出す「ライフ・オブ・パイ」の見事な立体像演出山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(2/2 ページ)

» 2013年06月26日 17時37分 公開
[山本浩司,ITmedia]
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「BD「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」。価格は3980円(販売はワーナー・ホーム・ビデオ)(c)Warner Bros.Entertainment Inc.

 その画質は自分の視力が一段階上がったような、そんな錯覚を呼び起こす鮮鋭感に満ちあふれたもので、まさに峻烈(しゅんれつ)の極みと呼びたくなる超高精細映像だった。主人公の少年の顔のアップなど、薄く生えた微細な産毛までもクローズアップし、その柔らかそうな頬の質感のリアルさに圧倒される思いを抱いた。母親役のサンドラ・ブロックの顔のアップでは、頬の毛穴を驚くほどきめ細かく解像し、その尖鋭感の高さは、データベースを元にマッピング超解像処理を行なうソニー「KD-65X9200A」を上回ると実感した。色数の多さや色の深みでは、新提案のトリルミナスカラーを採用した「X9200Aシリーズ」が一歩リードするのは間違いないが、このBDを観るかぎり、こと超解像のキレ、尖鋭度の高さではZ8Xシリーズに分があるように思える。なるほど、この個性の違いは面白い。

 つい最近パナソニックから、Blu-ray Discの拡張領域にスタジオマスターの12bit信号と8bit信号の差分データを収録し、対応BDレコーダーのパナソニック「DMR-BZT9300」で再生すると、元のスタジオマスターと同じ12bit階調が再現できるとする「マスターグレードビデオコーディング」技術が発表された。Z8Xシリーズのコンテンツ・モードにはすでに「高画質アニメ(BD)」が用意されており、その対応ソフトであるBDのアニメ作品を万全に楽しめる仕様になっていることも特筆しておきたい。

 Z8Xシリーズの58V型、65V型、84V型とすべてのモデルをチェックしてみたが、ぼくがいちばん気に入ったのは65V型の「65Z8X」だ。58V型と65V型は正面コントラストに優れた倍速駆動のVAパネルが、84V型は視野角の広いIPS パネルが採用されており、3機種ともにLED光源の配置はエッジライト方式(58V型は液晶パネルの左右、65V型と84V型は上下に配置している)だ。3D表示は、58V型がアクティブシャッター方式、65V型と84V型が偏光フィルターを用いたパッシブ方式となる。

「65Z8X」

 65V型のVAパネルは、おそらくソニー「X9200Aシリーズ」と同じ台湾メーカーから供給を受けていると想像するが、パネルの輝度ムラ、色ムラは比較的よく抑えられている。筆者が見たセットでは58V型のほうがややパネルのムラが多い印象だった。しかし、ソニーのX9200Aシリーズでも感じたが、4Kアップコンバート画質を含めてこれほど信号処理系が素晴らしいのだから、きめ細かいローカルディミング(部分減光)が可能な直下型バックライト・パネルでこのキレのよい4K画質を観たかったと思う。良質なパネル供給メーカーの韓国勢が、フルHDのOLED(有機EL)に悪戦苦闘している状況下、その願いはかなえられなかったわけだが……。

4Kパネルなら偏光方式の3Dも高解像度

 ところで、先述のように3D表示は65V型が偏光方式で、58V型はアクティブシャッター方式。どちらも倍速(120Hz)駆動タイプなので、58V型でBlu-ray 3Dを観ると、クロストークがかなり目立ってしまうと想像できる(実際にはチェックしていないのだけれど)。そこで、偏光方式の65V型「65Z8X」を使って、つい最近自室のプロジェクターで3D再生してその立体像演出の見事さに感激した3D映画BD「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日間」(2012 年作品、アン・リー監督)を観てみることにした。

Blu-ray 3D「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日間 4枚組コレクターズ・エディション」(特製ブックレット付き)は5705円で販売中。(c)2013 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

 先の第85回アカデミー賞で監督賞はじめ、撮影賞、作曲賞、視覚効果賞を獲得したこの映画、2D版BDの画質もたいへん素晴らしいのだが、65Z8Xで観る3D映像はひじょうに明快でキレがよく、太平洋の荒波にもまれながらベンガルトラと漂流を続ける少年の類稀なファンタジーを思う存分楽しんだ。

 偏光方式の3D表示は、画面前面の偏光シートによって、左右それぞれの映像が水平1ラインごとに振り分けて表示される仕組み。それゆえフルHDパネルの偏光3Dは垂直解像度の不足を実感しがちなのだが(左右それぞれ1フレームの垂直解像度が540本になってしまい、スダレ状に見えてしまう)、垂直解像度が2160本の4Kテレビでは、偏光方式3D表示でも左右それぞれオリジナルの垂直1080本が確保されるわけで、画質面でもほとんど不満を抱かせないのだ。アクティブ・シャッター方式と異なり、きわめて軽い3Dメガネの装着感も実に快適だ。

 「ライフ・オブ・パイ〜」はその3D演出の見事さで「アバター」「ヒューゴの不思議な発明」に並ぶ名作だと思うが、貨物船の遭難シーンや救命ボートに乗った少年とトラをめがけて無数のトビウオが猛スピードで突進してくるシーンなど、その迫力たっぷりの3D演出に心から満足した。

 また、このBDは実にダイナミックなサラウンドサウンドが楽しめる作品でもある。ただし、画面下部の狭ベゼルに下向きに押し込められた本機内蔵スピーカーは、残念ながらそのダイナミズムを十全に表現することはできない。ぜひAVアンプを用いて本格的な5.1chシステムを組み上げて、楽しんでいただきたいと思う。店頭で5万円を切るような価格に設定されたソニー「STR-DN1040」など、この夏は入門クラスに素晴らしい出来のAVアンプが出そろっている。65Z8Xの超絶画質にバランスさせるには、ぜひこのレベルのサラウンドシステムを用意すべきだと思う。

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