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NHKがハイブリッドキャストを9月に開始、何ができるのか?(2/2 ページ)

» 2013年08月21日 21時37分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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 もともとハイブリッドキャストの大きな特長は、放送波の中にインターネット上のコンテンツを取得するように指示する制御信号が組み込まれていること。対応するテレビでは、指定のサーバから、どのタイミングでコンテンツを取得し、画面に表示するかを秒単位で指定できる。その特長を生かした番組は、秋以降に登場するという。

ハイブリッドキャストの仕組み

 個々の番組については語られなかったが、例えばクイズ番組のような視聴者参加型番組でタブレット連携を計画している。テレビ画面だけでは不足しがちな情報をスマホやタブレットで提供できるという。またオンデマンド動画との連携については先述の過去番組表が挙げられる。

 「制作者も全く新しい演出を開発することになり、現在は技術的、制度的な課題にぶつかりながら準備をしている段階。来年度に向けては、番組数をかなり増やしてNHKのハイブリッドキャストとしてイメージを作っていきたい」(桑原氏)。

 なお、ハイブリッドキャストでは“録画して視聴”することはあまり考慮されていないようだ。その理由について技術面を担当するメディア企画室専任局長の加藤久和氏は、「放送波をそのまま記録するレコーダーであれば、トリガー情報は記録される可能性はある。むしろ問題は、放送局がいつまでサーバに関連情報を置いておくか。現状で録画番組からのコンテンツ再生を保証することはできない」と説明している。

3年後のイメージ

 説明会では、「3年後くらいのイメージ」という動画が公開された。これには5月の技研公開(NHK放送技術研究所一般公開)で注目を集めた未来的な使い方が多く含まれていた。

 例えばサッカー中継では、画面内に動き回る選手の名前などが表示され、活躍している選手がすぐに分かる。決定的なシーンを見逃した人にメッセージを送り、その中にネット動画のリンクを張る。受け取った人の家にHybridcast対応テレビがあれば、指先の操作でタブレットからテレビに表示を切り替え、大画面で楽しめる。

 料理番組の例では、ネットスーパーのような宅配サービスと連携した使い方を提案した。番組連携のクッキングアプリを使い、手元のタブレットにレシピを表示する。足りない材料があれば、その場で注文。下ごしらえしているうちにほかの材料が届くという寸法だ。

 学習番組では、双方向機能を活用して学習効果が向上するという。視聴者参加型なら、平均正解率や自分の順位が分かる。また間違えた問題については、放送局の番組ライブラリーから復習に役立つ動画を紹介してくれるという。

 番組の予告を見て気になったら、その場で視聴予約が行える。放送開始前にテレビやスマートフォンにメッセージが届くため、見逃しを避けられるという。見逃し番組リストに加え、後でオンデマンドサービスをチェックこともできる。

 ほかにも、外出前に目的地のお天気カメラ映像をチェックしたり、地震発生時に離れた場所にいる家族や友人に対して安否情報を送るといった活用例もあった。

普及の見通しは?

 質疑応答で改めてハイブリッドキャストを提供する意義と普及の見通しについて尋ねられた両氏は、「今までもスマートテレビやネット対応テレビあったが、これまではテレビ画面とネット画面を切り替え、いずれかを選んで視聴するものだった。また、ネット上のコンテンツは番組視聴を前提として作られたものではないために分かりにくい面もある。対してHybridcastは本当の融合環境。番組内容を把握している放送局がまとめた情報のほうが視聴者にとっては分かりやすい」と指摘する。

 また、今までのスマートテレビはメーカーによって仕様が異なっていたが、今回は(IPTVフォーラムによって)標準化されていることも大きい。「共通性という価値が大きくちがう。今後の成長性は十分見込めると思う」(加藤氏)。

左から東芝の「Z8X」「Z7」「J7」シリーズ。計10機種がハイブリッドキャスト対応機となる(Z7/J7はファームウェアアップデートが必要)

 9月2日時点の対応テレビは、今のところ東芝の「Z8X」「Z7」「J7」の3シリーズ10機種のみとなる(Z7/J7はファームウェアアップデートが必要)。この点について加藤氏は、「対応機種が増えることを期待しているし、民放の参入も期待したい。卵が先か、鶏が先かというよくある議論になるが、今後2〜3年も経てば地上デジタル放送の開始から10年となり、テレビの買い替えも進むはず。その頃には数百万のユーザーがいると期待している」と話している。

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