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4Kテレビにさらなる付加価値を――「2014 International CES」(前編)麻倉怜士のデジタル閻魔帳(2/2 ページ)

» 2014年01月29日 16時44分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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 ちょっと数えてみましょう。LGの場合、フラットタイプは液晶の49V型、55V型、65V型、79V型、84V型、98V型に有機ELの55V型を加えて7機種でした。一方、カーブドは液晶65V型と5K液晶の105V型、そして4K有機ELの55V型、65V型、77V型を合わせて5機種です。さらにサムスンブースでは、フラットタイプが4K液晶の50V型、55V型、65V型、75V型の4機種だったのに対し、カーブドは4K液晶の55V型、65V型、78V型、5Kの105V型を加えて4機種。さらに4K有機ELのカーブドもあったので、ちょうど半分が湾曲タイプだったわけです。

LGの77V型フレキシブル有機EL(左)と79V型フラット4K液晶テレビ(右)

――改めて画面を湾曲させることのメリットを教えてください

麻倉氏: 1つは「視野が広がる」こと。同じ横幅のフラットタイプと並べた場合、湾曲した画面の端は斜め延長線上に結像するため、よりワイドに見えるのだそうです。視聴者から画面のセンター部とエッジ部が等距離となるため、映像がパンしたときの不自然さが抑えられます。一番効果的なのは3D表示で、従来は画面の周辺部にいくほど3D効果が落ちていたのですが、カーブドスクリーンでは効果を維持できます。

 一方、カーブドの画面で自然で見るためにはカメラの撮像素子から曲げる必要があるのではないか? といった疑問はついて回りますし、大画面テレビでは映り込みがすごく気になるでしょう。実際に見ると、映り込んだものがぐにゃぐにゃに見えて、あまり気分の良いものではありません。以前にも指摘しましたが、湾曲した画面はテレビよりもプロジェクターやHMDのほうが合うと思います。ただ、展示機の中で唯一“すごい”と感じたのは、105V型の5Kテレビです。より濃密な画面との対話感を味わえます。

――105V型の5Kテレビはシネスコサイズだそうですね。今後、製品として登場するのでしょうか

麻倉氏: 21:9のアスペクト比は、オランダのフィリップスが先に出しましたが、今回は東芝など複数のメーカーが展示していました。この展示機が発売されるのか、メーカーがどこまで真剣に取り組んでいるのかは分かりません。展示会用の“ショーモデル”である可能性もあります。

LG(左)とサムスンの105V型5Kテレビ

 そもそも、なぜ21:9の液晶パネルが突然出てきたかというと、第8世代マザーガラスの切り方を変えたからです。縦に切ると98インチの4Kパネルが2枚とれますが、横に切ると105インチの5Kパネルが2枚になるのです。

 通常の16:9では、シネスコサイズの映画を見る際、画面の上下に黒帯が出るレターボックスになってしまいますが、21:9なら画面の広さと解像度を最大限に生かすことができます。一方、テレビ放送を見るときには左右に黒帯が出ることになりますが、面白いのは空いたスペースを使い、番組情報やネットの情報などを並べて表示することもできること。テレビ視聴時はスマートテレビとして使い、映画を見るときには画面いっぱいに映し出せるわけで、今後の展開次第では面白い試みになると思います。

スマートテレビに3D

――スマートテレビ関連はいかがでしたか?

麻倉氏: カンファレンスや展示ブースではあまり話題になりませんでしたが、パナソニックがMozillaとの提携を、LGがwebOSをテレビに採用することを発表しました。LGでは、今までテレビ放送とIP通信の切替が遅かったのですが、それを改善できると話していました。ほかにもサムスンが1つの画面を左右に分けてテレビ放送とIP経由の動画を同時に表示できるマルチ画面のテレビを提案していました。

 国内メーカーでは東芝が印象的でした。「名ばかりのスマートテレビブームは終わった」として、全録機能とクラウドサービス「TimeOn」を世界に輸出します。海外ではDVR(HDDレコーダー)こそ普及していますが、レコメンデーション機能など放送視聴時の利便性が上がるのであれば受け入れられる可能性も高いと思います。

東芝の65V型レグザ(ASEAN輸出モデル)と東芝デジタルプロダクツ&サービス社の徳光重則社長(左)。中国ハイセンスの裸眼立体視(右)

 3D関連では、中国メーカーに勢いがありましたね。ブース展示も洗練されてきて、4Kやカーブドモデルもたくさん展示していました。その中に裸眼立体視の大型テレビもあったのですが、これは後ろにいる人の顔が前に見えてしまったりと、まだまだ改善の余地が大きいと感じました。

――後編では、有機ELパネルと国内メーカーの動向、そして4K対応の次世代Blu-ray Discなどについて聞いていきます。

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