麻倉氏: もう1つのトピックとして、ユーザーに利便性とコピー機能を提供する方向性が検討されています。例えば音楽配信では、クラウドを利用して対応デバイスならどこでも自分の購入した楽曲を楽しめるようになりましたよね。現在のBDでも購入者に対してオンラインでデジタルコピーを提供し、モバイル端末で再生できるといった機能はありますが、それは別途ダウンロードする必要があります。
今回、新たに「デジタルブリッジ」という概念を作りました。これは、光ディスクをプレーヤーに入れるとサーバにコピーを作り、テレビでも視聴できますし、そこからスマートフォンなどにコピーして持ち出すことができるというものです。もちろんコピーワンスにするなど海賊版対策は施されるはずですが、大きなポイントは次世代の4K対応BDだけではなく、現行のみなさんお手持ちのフルHDのBDも対応する可能性が高いこと。もちろん、サーバには4KあるいはフルHDのままコピーできます。日本市場ではBDレコーダーが人気なので、サーバにする機械には困りませんね。
――実現するのでしょうか
麻倉氏: ハリウッドのスタジオ各社は大筋で合意していますが、例えばワーナーなどUltraVioletを進めてきた経緯があります。先ほどのダウンロードしたファイルをモバイル機器にチェックアウトする方式ですね。例えばUltraVioletはCFF(コモンファイルフォーマット)ですが、これをSSF(スタンダードファイルフォーマット)に変え、著作権保護を付けるといった作業が生じます。
また、一部のBDAメンバーは、持ち出しに関して「SeeQVault」(シーキューボルト)の活用も考えているようですね。いずれにしてもハリウッド側は解像度を向上させるだけではなく、より印象的な映像にしたい、そして今よりも高い利便性を提供したいと考えています。またハリウッドはユーザー情報が欲しいのです。コピーをクラウド認証するときにそれは手に入ります。そこからさまざまなビジネスにつなげたいというのが、ハリウッドの真意なのです。
――ほかにCESで印象的なトピックはありますか?
麻倉氏: オーディオ分野でもいくつかのトピックがありました。まずはシャープが、WiSA(Wireless Speaker and Audio)対応のユニバーサルプレーヤーを展示したことです。192kHz/24bitのハイレゾ音声をワイヤレスで楽しめるというもので、日本円で約40万円と高価です。主に米国のハイエンド市場をターゲットにしていて、インストーラールートで販売する予定です。また、B&OからもWiSA対応プレーヤーが出ます。
もう1つ、個人的に興味を持ったのが、米国ボストンに本拠を置くアトランティック・テクノロジーというメーカーのスピーカーです。わずか数センチの小さなユニットで、信じられないほどの豊かな低音を出していました。これは薄型テレビの音を改善するソリューションです。
麻倉氏: というわけで、今回も見るものが多い取材でした。とくに前編で取り上げたテレビのフォームファクターの変化は面白いと思います。ディスプレイといえば、16:9の平たい板だと思っていたのが、曲がったり、21:9になったり形が変わってきています。また、ソニーの超短焦点4Kプロジェクターもユニークです。これは4Kプロジェクターの「VPL-VW500ES」をベースに、レーザー光源と反射ミラーを使って壁に96〜147インチの画面を映し出すというものです。
マニアの視点では「なるべく大きな画面を使いたいが、ニュースは小さくても手軽なほうがいい」といったようにコンテンツによってサイズは変わるべきでしょう。ズームで画面サイズを自在に変えることのできるプロジェクターを、手軽に使えるものにする試みですね。例えば映画を見るときなどは147インチの湾曲画面にしてみるといったアイデアもあるかもしれません。
これまでは、SDからHD、4Kと一直線に高解像度化路線を進んできましたが、それが落ち着いたあとは、コンテンツとディスプレイの関係にさまざまな形とアイデアが出来てくるような予感がしました。これが私にとって、今回のCESに行った意義だったと思います。
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