試聴には今井美樹が英国のロンドンでレコーディングしたCD、「ダイアローグ」からTr.1に収録されているこのシーズンにぴったりの「卒業写真」を選んでみた。このアルバムは全編ユーミンの曲をカバーした構成だが、彼女ならではの優しい語り口がとても素直に耳に飛び込んでくる作品である。英国人のアレンジャーを起用している割には少し歌謡曲風味の楽曲もあるが、これはこれで十分に楽しめると思う。
最初に標準的なステレオ仕様で聴いてみた。ボーカルの伸びやかさが印象的だが、なんといってもベースラインのたくましさに驚かされる。プリメインアンプの「NANO-UA1」で、もう少し力強さがほしいと感じた部分がなくなっているだけでなく、音に躍動感がありブラインドで聴けば誰もこんな小さなアンプを使っているとは思わない。
今回は「NANO-CD1」のデジタル出力を96kHzモードにセットしている。プリメインアンプの「NANO-UA1」と組み合わせた時は少し音が優しくなるように感じたが、ここではそうはならず、声のリアリティーが増し、響きがきれいになる。電源投入直後は少しほぐれない感じだが、2時間程度通電した後だと雑味が減り一層まろやかさが高まる。デジタルアンプなのにこれは面白い変化だ。エコな使い方ではないが、良い音のためにはこれくらいの配慮があってもいいだろう。読者からはお叱りを受けそうだが、そうした傾向をつかんでから、ぼくはほとんど電源を落としていない。
次に「NANO-A1」をぜいたくにも2台使いし、モノーラル仕様で聴いてみた。スペック上の音響出力は変わらないが、先ほども触れたように電源事情の改善と完全にLチャンネルとRチャンネルが独立するためクロストークが減る。結果ボーカルのフォーカス感が高まりセンターに収束するし、音場が立体的になる。また静けさが増すことで余韻がより細やかに描き出される。全体にステレオ使いの時より上品というか上質な感じが聴きとれるようになる。やや変則的な使い方だが、これはこれでありだと思った。残念ながら「LS-50」は同軸型のスピーカーなので、入力端子が1つしかないためバイアンプモードを試すことは出来なかったが、こうした傾向からステレオ使いより間違いなくスピーカーの能力を引き出してくれると思った。
読者のみんなにはやっちゃいけないよ、といいながらナノコンポを見ているとその可愛らしさからどうしても“重ね置き”したくなる。実際、今回もパワーアンプを重ね、CDプレーヤーとDACを2段重ねした。いずれのモデルもアルミダイキャストの強固なシャーシをまとっているので、こうした使い方をしても特に問題は見当たらない。
またどの製品も電源は別体になったACアダプター方式だが、DC-INの端子はモデルによって形状が異なり誤配線しないように工夫されている。細かいことだがこんなところにもさりげない配慮が伺える。もっとも電源のアダプタが後ろにずらりとぶら下がるとちょっと煩い。ぜひともナノコンポと同サイズの強化電源をリリースして総ての機器へここから電源を供給するといった方法を考えても良い時期に来ているんじゃあありませんかね。次なる新製品への期待とともにこうしたアプローチにも挑戦してほしいものです。
ナノコンポは、時代性を反映して「小さいことは良いことだ」を体現させてくれる製品である。小さくても物作りの魂さえ失わなければ、こんな音をスピーカーから引き出してくれる。「NANO-A1」はそうしたオーディオの面白さを改めて体感させてくれる製品である。
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