検査に合格したディスプレイには、映画視聴用の映像モード「THX Movie mode」が2つ設けられる。2つというのは、暗室用の「Dark」と、200ルクス程度のリビングシアターを想定した「Bright」を用意するからだ。この2つはガンマなど一部基準が異なり、「暗い部屋と同じように楽しめるように調整している」。またプロジェクターは完全暗室を想定しているため、これも基準は異なる。例えばテレビのDarkはガンマ2.2だが、プロジェクターは映画館と同じガンマ2.4となっている。
家庭用テレビの場合、近年はエッジ式のLEDバックライトを採用しているケースが多い。エッジ式は液晶パネルの左右あるいは上下だけにLED光源を持ち、画面の中心まで「導光板」と呼ばれる白い板を使って光を届ける仕組み。光源の位置がもともと偏っているのだから、全体を均一に光らせること(=輝度均一性)がいかに難しいか、容易に想像できるだろう。
シャープの「XL10シリーズ」もエッジ式バックライトを使用したテレビだ。開発者の1人であるシャープデジタル情報家電本部の小池晃氏は、THXの検査について「かなり苦戦しながら、なんとか合格した」と振り返る。「ユニフォミティーを確保するため、まずテレビのシャーシをまっすぐにして歪み(ゆがみ)の出ないようにしなければならない。さらにLEDモジュールの位置をミクロン単位で調整する。国内で液晶パネルモジュールの生産からしているからこそできたと思う」。
では、THX認証機で実際に映画を見ると何が違うのだろうか。小池氏はTHX認証済みの「60XL10」と認証を受けていないフルHDモデルを並べ、いくつかの映画を流しながら解説してくれた。「例えば画面が均一に光らないと、例えば白い壁に凹凸があるように見えてしまう」。
またTHX認証を受けていないモデルでは、近景と遠景の描き分けがあやふやで、距離感をはっきりと表現できていない。これは輝度均一性だけでなく解像度や映像処理全般に関わってくることだが、同時に映画のストーリーにも大きく影響を与える。例えば、高い場所で主人公が敵と格闘しているとき。下の景色が遠くに描けていないと緊迫感は半減してしまうだろう。
もう1つ、THX認定テレビは「THX Movie mode」の時だけにメリットがあるわけではない。輝度均一性など、いわばディスプレイとしての性能が底上げされ、結果として一定以上の性能が保証されているからだ。「通常のスタジオ撮影や屋外ロケのテレビ番組でも実際に近い映像を楽しめる。品質に対する安心感という点で、THX認証は(映画ファンだけでなく)一般のユーザーにもメリットがある」(小池氏)。
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