「サイクロン」――ダイソンは何が違うのか?テクノロジー解説 <1>(2/2 ページ)

» 2014年06月17日 10時00分 公開
[滝田勝紀,PR/ITmedia]
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 ただし、コーンのサイズが小さすぎてもいけない。例えば円錐の先端部分が狭いとゴミが詰まる可能性も出てくるからだ。またキャニスター式やハンディといった製品タイプ、使用するモーターなどによっても型は変わるため、製品ごとに最適なバランスが求められる。

 例えば最新のキャニスター式掃除機「DC63」は、2層で計24個のコーンを搭載しているが、これは2012年に発売した「DC46」(2層で32個)よりも少ない。その代わり、自社開発の新型デジタルモーター「V4」で駆動力を上げ、コーン1つあたりの径も小さくしてゴミの分離効率を向上させながら、全体の小型化も実現した。コーンの数を減らしても、製品としてのパフォーマンスは飛躍的に向上する。このバランスが、世代を追うごとに洗練され、レベルアップしているのだ。

 ダイソンの社内には、サイクロン技術だけを研究し続ける専任の開発チームが存在する。彼らは何か新しいものを作るとき、まずCFD(Computational Fluid Dynamics)を用いて最適な形状を割り出し、それをCADでモデル化。初期プロトタイプ(ラピッドプロトタイピング)を組み立て、コンピューターがはじき出した数値が正しいことを立証するという手順をひたすら繰り返す。机上の計算だけではない。理論と実践を組み合わせて確実な解を求め、実現するのがダイソン流だ。

フィルターを中心部分に搭載し、全体のコンパクト化にも貢献した「ラジアルルートサイクロンテクノロジー」(左)。「2ティアーラジアルサイクロン」はハンディタイプにも採用されている(右)

 各コーンに至る空気の道筋も高度な理論と検証の成果だ。例えば1層サイクロンであれば各コーンに均等に空気が流れ込むように調整すればいいが、2層サイクロンになると下段と上段で流路の長さに差が生じてしまう。その状態で動かすと、上段のコーンは圧力が下がり、機能しなくなってしまう。このため上段コーンに至る流路を下段よりも少しだけ太くして、空気を多めに流すことでコーン内の圧力を高めた。

 あまり目立たない部分にも工夫がある。サイクロンにとって、空気が流れる道の気密性確保は重要。そのため各ジョイント部にゴム製パッキンを用いているが、その1つ1つにも意味がある。

 例えばクリアビンのボトム部分にあるダストボックスと本体のジョイント部には柔らかめのゴムを用いた平坦な形状のパッキンを用いている。その裏側にあたるクリアビンのふた部分(下面)には小さな穴が3つ。掃除機が稼働すると気圧差でゴムパッキンが膨らみ、クリアビン内の気密性を高める仕組みだ。このように、目に見えるどのパーツをとっても、その形や存在にはしっかりとした意味がある。

クリアビン底面のゴムパッキン(左)。裏側をよく見ると小さい穴が3つずつ開いている。掃除機を動かすとゴムパッキンが膨らみ、気密性を高める仕組みだ

 サイクロンシステムをもっとも効率的に稼働させるため、多くの人間がさまざまな視点で検証し、細かい微調整をかけて1つ1つの部品を作り出す。これがダイソンの“モノ作り”であり、同社のサイクロン掃除機が“吸引力が落ちない”とうたっている背景には、こうした理論的な製品開発に裏付けられた性能があった。ただし、それは製品を見ただけでは分からない部分でもある。

「DC63」は2層式のサイクロンを採用している

 改めて「DC63」を見ると、サイクロン構造の上部にカラフルなラインが入っていることが分かる。一見、飾りモールのように見えるが、実はコーン内の気密性を確保するためのガスケットシールの一部を見せているのだ。

 エンジニア出身のジェームズ・ダイソン氏は、膨大な手間と時間をかけて開発した技術の一端をユーザーに見せていくことも重要だと考えている。「G-Force」ではカバーで隠していたサイクロン構造を、その後の製品で積極的に見せるようになったように、今回のガスケットシールも単なるデザイン上のアクセントではない。気密性を高め、効率アップしたサイクロン技術に対する自信の現れといえそうだ。

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提供:ダイソン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia LifeStyle 編集部/掲載内容有効期限:2014年6月30日

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