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iPhoneによるハイレゾ再生との相性も抜群、オンキヨー初の多機能ポタアン「DAC-HA200」ハイレゾ対応ポタアン検証(2)(2/3 ページ)

» 2014年08月31日 16時16分 公開
[山本敦ITmedia]

iOS機器はUSB変換ケーブルのみでのハイレゾ再生に対応

 現状、iPhoneでハイレゾ再生を楽しむ場合は、デバイスにiOS7を導入後、「Lightinig-USBカメラアダプター」または30ピン端子の場合は「Camera Connection Kit」が必要になる。あとはオンキヨーの「HF Player」などハイレゾ対応のプレーヤーアプリに音源を入れて再生すれば、USB-DACなど外部オーディオ機器にUSB経由でハイレゾ出力が行える。ただし、これはアップルが正式にサポートしているハイレゾの再生方法ではないため、全てのUSB-DACなど周辺機器で同じようにハイレゾ再生ができるとは限らない。また将来にわたって同じ方法が使える保証もないため、注意が必要だ。

iPhone 5sと比べてみてもコンパクトサイズを実現していることが分かる

 DAC-HA200の場合はiOS機器の充電やデータ転送に使用するアップル純正のUSB変換ケーブルを、そのままつないでハイレゾ再生ができるところが大きな特徴だ。iOS7を搭載するiOS機器にUSB接続した際はデバイスモードからホストモードに切り替えるiOS7のロールスイッチ機能により、Lightningケーブル1本で96kHz/24bitまでのハイレゾ再生が可能になる。USB変換ケーブルを使うことの効果は接続の利便性が高まるだけでなく、変換アダプタ接続した場合と比べて、再生時にiOS機器とアンプとの間で電源の相互供給を行わないので、結果iOS機器側のバッテリー消費をより低く抑える効果にもつながっている。

USB変換ケーブルで直接接続が可能

 本機能についてオンキヨーで動作確認が取れているiOS機器は、いずれもiOS7を搭載したiPhone 5s/5c/5、iPhone 4s/4、iPadシリーズ、第4世代以降のiPod touch、iPod Classic(160GB)、第6世代以降のiPod nanoになる。

 Androidスマートフォンでの音楽を聴く場合もUSBケーブル1本でつないで、高品位なデジタル再生が楽しめる。これは本機が、Android端末と接続するUSBハードウェアのための規格である「Android Open Accessory(AOA)」のプロトコル2.0を公式にサポートしたことによるもので、同じ機能に対応するAndroidスマートフォンとUSBケーブルでつないだ状態であれば、通常は必要になるUSB OTGホストケーブルを介さずに、44.1kHz/16bitまでのデジタル出力をアンプで受けて再生ができる。なおAndroidデバイスのAOA2.0対応については個別の機器ごとに、実際アンプにつないでみて音楽が再生できるかなど検証が必要になる。本機能を手持ちのAndroidスマートフォンで活用したい場合には、店頭のデモ機などで事前にチェックしておくと良いだろう。

iPhoneとの組み合わせでハイレゾを聴いてみる

 本機はポータブルアンプとしての用途が中心になることを想定して、今回はiPhone 5sとオンキヨーのプレーヤーアプリ「HF Player」の組み合わせでハイレゾの楽曲を試聴した。ヘッドフォンのリファレンスにはソニーの「MDR-1R」を使っている。

iPhone 5sと「HF Player」でハイレゾ音源を試聴

 なおアンプ自体が再生に対応しているハイレゾファイルは最大96kHz/24bitまでとなるが、オンキヨーのプレーヤーアプリ「HF Player」ではiPhoneに接続されている機器が内蔵するDACのキャパシティをアプリが自動識別して、最適なサンプリングレートに変換されたデータを出力するため192kHzの楽曲も楽しむことができる。またiOS機器とDAC-HA200をUSB接続した状態で再生すると、通常は「HF Player」がアプリ内課金1000円で有償提供するハイレゾ再生のためのHDプレーヤーパックが無料で利用できるようになる。

 山崎まさよしのアコースティックギターLIVEは躍動感あふれるサウンド。ボーカルは中高域の伸びがつややかで、声質にナチュラルな温かみとふくよかさが加わる。ホールに響くギターの演奏はアルペジオから力強いパワーコードのカッティングまで、細かなニュアンスを饒舌(じょうぜつ)に再現する。スチール弦のカッティングは軽やかなリズムを刻みながら、音色に力強さと深みがあり、濃淡の豊かな表情を見せる。バックを支える肉厚なストリングスのハーモニーが広々としたホールにヌケよく鮮やかに満ちていく立体的な響きも心地良い。

 クラシックはどうだろう。ラフマニノフのピアノ協奏曲では本機の解像力の高さを実感。ぶ厚い合奏の響きの中で、それぞれの楽器の音色をクリアに響かせながら濃厚なハーモニーを作り出す。一方ではソロのパートを独奏する楽器の音像もしっかりと安定したイメージで定位させつつ、ディティールまで立体的に描き込まれるから、オーケストラの演奏に奥行きが生まれてくる。ピアノは中低域の透明感が高く、スピード感溢れるスリリングな演奏を展開。高域も音の粒立ちや輪郭がシャープに描かれ、空間の奥深くへ自然と導かれていく心地良さが特筆できる。

 ロックはマイケル・ジャクソンの新譜「XSCAPE」を聴く。アンプを通すことで、ボーカルの声質は忠実に保ったまま、よりいっそうの躍動感が加わってくる。マイケルの声に温かい生命力がみなぎる。センターへの定位感がぐっと高まり、長音の滑らかさやビブラートなど細部の輪郭がより引き立ってくる。繊細な高域の肉付きもよくなって熱気を帯びてくる。バックの演奏はドラムスの低域の彫りが深まる印象。アタックが整って音場の明瞭(めいりょう)度が上がる印象。SNが高いので、パーカッションのアレンジも隅々まで見渡せる。ピアノやストリングスなどアコースティック楽器は高域の立ち上がり、立ち下がりのスムースさが演奏に引き締まった緊張感を与えている。各帯域間のバランスが良く、一体感の高い生命力みなぎるグルーブを感じることができた。

 エレクトロ系のサウンドをDaft Punkの楽曲「Doin' It Right」で確認した。低域の躍動感や空気を震わせるような勢いと広がりが、アンプを加えることでより引き立つ。奥深く立体的で、さまざまな表情を持つベースラインの動きが具に見えてくる。曲の中盤以降からボコーダーのループとメインボーカルが複雑にオーバーラップしてきても、それぞれのレイヤーにしっかりとフォーカスはキープされる。各帯域ともに付帯音や歪みのない、クリアな再現性が印象深い。メインボーカルの高域もエッジがキツくなることなく、潤いと温かみのある声質が心地良く耳の奥まで馴染んでくる。中低域の縦方向へのスムーズなつながりと高音域のワイドな表現が特徴。サウンドのユニフォーミティも非常に高く、ドラマティックで聴き応えのある音楽が心を躍らせてくれる。

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