ITmedia NEWS >

ソニーのプレミアムヘッドフォン「MDR-1A」を前モデルと徹底比較――「PHA-3」とのバランス接続も試すハイレゾ対応ヘッドフォン検証(2/5 ページ)

» 2014年11月25日 17時00分 公開
[山本敦,ITmedia]
※本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

プレミアムヘッドフォンのニューフェイス「MDR-1A」でハイレゾを聴く

 まずはハイレゾ音源をAstell&Kernのポータブルオーディオプレイヤー「AK100」に直接つないで試聴した。

Astell&Kern「AK100」と組み合わせてハイレゾ再生を確認した

 TOTOのアルバム「35周年アニヴァーサリー・ツアー〜ライブ・イン・ポーランド2013〜」から『Stop Loving You』(48kHz/24bit、FLAC)では、高域の透明感と滑らかさ、中低域へのスムーズなつながりと立体的な音像が特徴だ。前機種の「MDR-1R」も中高域の見晴らしや解像感は絶品だったが、「MDR-1A」ではさらに低域の力強さが増している。シンセサイザーやギターの音は詰まりがなく、すっきりと高域まで伸びて分離もよい。ボーカルの声の稜線は「MDR-1R」で聴くよりもさらにきめ細かく滑らかになった。楽器の位置関係や距離感も明快になり、結果として音楽の一体感がさらに高まる印象だ。

 曲終盤のドラムソロはシンバルやハイハットの音の粒までしっかりと鳴る。煌びやかなハイトーンは輪郭が柔らかく耳馴染みが良い。タムやバスドラの低域は深くズシンと沈み込む。鮮度の高い音や、充実したエネルギー感の引き出し方がとても上手いヘッドフォンだ。

ビル・エヴァンス・トリオの「Waltz for Debby」

 ジャズはビル・エヴァンス・トリオの「Waltz for Debby」から『Milestone』(192kHz/24bit、FLAC)を聴いた。ピアノのメロディは硬くリアリスティックな表情と、繊細でやわらかな表情の両面を垣間見せる。高域のサスティーンが滑らかに伸びて、階調表現は「MDR-1R」よりさらにきめ細かさが増したようだ。無駄がなくタイトで、ボリュームもしっかりとある筋肉質なウッドベースの音色は、密着感の上がったイヤーパッドがもたらす良い効果の1つだろう。中高域のクリアさやスピード感だけなら「MDR-1R」も負けていないが、低域の厚みと奥行き、臨場感の差が「MDR-1A」との比較で見えてくる。

 ダフト・パンクのアルバム「Random Access Memories」から『Doin' It Right (feat. Panda Bear)』(88.2kHz/24bit、FLAC)を聴いた。立体的な空間表現力や、低域のスピード感が「1R」よりもさらに高まっている印象だ。低域はたっぷりとした厚みを持ちながらヌケ感がよく、透明な残響が演奏の緊張感を高めている。ニュートラルで整った帯域バランスでありながら、音の鮮度が高く、勢いに満ちた音がダイレクトに耳の奥へと飛び込んでくるような感覚だ。ボコーダーやシンセサイザーの音が複雑に重なり合うパートも、それぞれの旋律を正確に描き分ける分解能の高さもみせる。基本的な素性は「MDR-1R」と変わらないが、「MDR-1A」ではディティールの描写力がより高まっているように感じられる。

「ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番、フランク:交響的変奏曲 アレクシス・ワイセンベルク/ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリンフィル」

 クラシックは「ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番、フランク:交響的変奏曲 アレクシス・ワイセンベルク/ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリンフィル」(96kHz/24bit、WAV)から、『第1楽章:モデラート』を試聴した。冒頭のストリングスは音の粒立ちが高く、ダイナミックに旋律を歌い上げる。ピアノの残響がすうっと自然に広がって、粘り気のある余韻は本機ならでは。「MDR-1R」よりも「MDR-1A」のサウンドは微細な音に存在感があり、弱音から強音までのダイナミックレンジもより広く描かれる、ゆとりあふれるサウンドだ。

 最後にノラ・ジョーンズのアルバム「Come Away With Me」から『The Nearness Of You』(192kHz/24bit、WAV)を聴いてボーカルを中心にチェックした。声の抑揚をリアルに描いて、イキイキとした生命感を蘇らせる。情報量が非常に密だ。柔らかく温かみのある声の再現性は「MDR-1R」の特徴でもあったが、「MDR-1A」ではさらにウェットで艶めかしい声質になる。ブレスやビブラートのディティールがきめ細かく描かれて、口元のイメージが頭の中にリアルに浮かんでくる官能的な体験が味わえる。伴奏のピアノも豊満な余韻を響かせて、暖かい音色が包み込む。

 「MDR-1R」に比べると、特に低域再生の進化が顕著に感じられる。無駄なく分厚い量感を引き出し、リズムのスピード感と正確さに磨きがかかっている。低域の足腰がよりしっかりとするうえに、クリアなミドルレンジ、煌びやかで繊細な高域とのバランスもナチュラルで違和感がない。スムーズで一体感のあるフレッシュなサウンドだ。

 ハイレゾだけでなく、iPhoneを直接つないでCDリッピングの音源も試聴した。ミッドレンジを中心とした音の充実ぶりや、シャープで力強い音の輪郭線は両モデルが共有する特長だが、奥行き方向への立体感は「MDR-1A」の進化が顕著にみられる。低域の音像はタイトに引き締まり、心地良くヌケてキレのあるビートが心地良い。ナチュラルで鮮度の高いボーカルが楽しめるのも「MDR-1A」オーナーだけの特権だと思う。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.