ITmedia NEWS >

DSD対応ハイレゾプレーヤー&ポタアン――2つの顔を持つティアック「HA-P90SD」を聴く(3/3 ページ)

» 2015年01月16日 14時41分 公開
[山本敦ITmedia]
前のページへ 1|2|3       
※本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 本体を起動して、マルチウェイスイッチからディスプレイに表示されている「MUSIC」を選ぶと、アルバムやアーティスト、ジャンル、プレイリストなどの単位でSDカードに収録されている楽曲のリストが表示される。聴きたい楽曲にカーソルを合わせて、天面の十字ボタンから再生を選ぶ。操作方法は極めてシンプルだ。

マルチウェイスイッチは上下に倒すか、あるいは押し込む操作になる

 ミロシュ・カラダグリッチのアルバム「Latino Gold」から「Barrios Mangoré: Un Sueño en la Floresta」(96kHz/24bit、FLAC)ではクラシックギターのふくよかな箱鳴り感と弦のしなやかさと伸びやかな響きを引き出す。ふくよかさと清々しさが同居するリッチなサウンドだ。SNが高く、音ヌケの非常に良い透明で立体的な空間表現力にも長けている。低域は力強く、音色は太くてフレッシュ。中域も芯の通った滑らかな音像だ。高域へと滑らかにつながる階調性も美しい。普段のリスニングで気がつかなかった、ハイトーンの細かな表情を浮き彫りにするセンスの良さが光る。またアコースティック楽器の音に余計な色づけがなく、特段のリアリティが感じられるところは「HA-P50」を初めて聴いた時の印象にとても近かった。

ディスプレイは日本語表示もサポートする

 DSD5.6MHzは坂本龍一のアルバム「Coda」から「Merry Christmas Mr.Lawrence」を試いて確認した。ワイドな広がり感と、音の強弱を巧みに描き分ける力が明らかに優秀なプレーヤーだ。低域はどっしりとしていて迫力があり、中域のアタック感はビビッドでキレ味に富む。ふくらむことなくタイトで鋭い音が素速く耳の奥へ一気に到達する。音の粒に弾力があってつややかだ。高域のサスティーンがシルキーで残響が色鮮やか。低域から高域までニュートラルなバランスで情報量にも富む。雄大に歌い上げる力と、緻密にディティールを描き込む力の両方をハイレベルに備えるプレイヤーだ。

左上にDSD 5.6の表示

 続いてiPhone 5sにアップル純正のUSB変換ケーブルで直接つないだ音を聴いてみた。接続方法はケーブルを本体背面のUSB-A端子に挿すだけ。ディスプレイに「iOS device connected」という表示が出たら、iPhoneに入れた「TEAC HR Player」や「Onkyo HF Player」などのハイレゾ対応音楽プレイヤーアプリを起動して、保存した曲を再生するだけ。本体のスイッチなどでプレイヤーからアンプに機能を切り替える必要がないので、シームレスに扱える操作性が魅力だ。

iPhone 5sと「HR Player」で試聴

 マイケル・ジャクソンの「XSCAPE」から「Love Never Felt So Good」では、iPhone単体で聴くよりも低域のアタックの強さと鋭さが一段と高くなる。量感がたっぷりとあるのに、だぶついたような印象は全くない。アンプのパワーをしっかりと制御して送り出しているような手応えがある。エレキギターのカッティングやパーカッションなど、細かいアレンジも輪郭が引き締まって立体感が一段と増してくるようだ。ボーカルはセンターへの定位も鮮やか。バンドの楽器との位置関係が、iPhone単体で聴く場合とは段違いなほど生々しくイメージできるようになる。声質はナチュラルで、ディティールの再現性も高い。ボーカル周りのざらついたような質感がアンプを通すことで払拭され、ノイズっぽさも打ち消される。代わって音と静寂とのコントラストに磨きがかかり、ミュージシャンたちによる演奏の表情が豊かさを増してくる。

iPhoneにつなぐと「iOS device connected」の表示が出る

 Daft Punkのアルバム「Random Access Memories」から「Doin' it Right」では、タイトで力強い低域が全体の緊張感を高める。音が鋭く立ち上がって、ふくよかな余韻が広がる。ボーカルのハイトーンは残響が濃いめで、余韻の階調表現は美しく滑らかだ。低域の深さとともに、高さ方向への伸びやかさも秀逸。ボリュームを変えてもそのバランスが崩れることはなかった。

 単体プレーヤーとしてチェックした際に聴いたミロシュのギターを、iPhoneでの再生と聴き比べてみた。基本的な音の傾向は同じで、弦のふくよかな響きを忠実に再現しながら、緻密なハイトーンの階調性もよく引き出してくる。低域のエネルギー感も十分だ。単体プレイヤーとして聴いた音の方がより低域がシャープで透明感も高く感るのはiPhoneの素性による違いが表れているからだろう。


レッドモデルもラインアップ

 ティアックのニューフェイス「HA-P90SD」は、コアなオーディオファンを満足させるサウンドと多彩な機能を持ちながら、ハイレゾ初心者にも扱いやすいプレイヤーとして完成度の高いモデルに仕上がっている。単体のポータブルプレイヤーとしてだけではなく、デスクトップオーディオ用のDACにもなれば、iPhoneやAndroidスマホの音をグレードアップできるポタアンとして、さまざまな活用シーンが想定できる。DSDネイティブ再生にも対応するので、ハイレゾ再生のトレンドもしっかりと抑えることができる。これだけのマルチユースに対応しながらコストパフォーマンスの良さも突き詰めた、まさにマニアから入門者までのリスニングスタイルを網羅した良質な製品が誕生した。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.