もちろん音楽関連以外にもさまざまな発明をしており、社名の一部にもなっている「計算機」は発明の部屋と数の部屋に展示されている。
発明の部屋には、世界初の小型純電気式計算機「14-A」(1957年)を展示。これは341個のリレー素子(継電器)を使ったもので、それまでの歯車式に比べ、消費電力や音をかなり小さくした計算機。なんと、現在でも動かすことができる。また複雑な計算を歯車を使ってプログラムできる科学技術用計算機「AL-1」(1962年)も展示されている。
隣の数の部屋には、カシオ計算機を代表する計算機の数々が展示されている。家庭に計算機を普及させるきっかけになった“答え一発”「カシオミニ」(1972年)、クレジットカードサイズで厚さ0.8ミリの電卓「SL-800」(1983年)などだ。
10年ごとに進歩し、わずか30年で机ほどの大きさだった計算機がクレジットカードサイズにまで小型化、消費電力も1500万分の1にしたという開発力と技術力に驚かされた。
時の部屋には、カシオ計算機が生み出した腕時計の数々が展示されており、大の月・小の月を自動判別する世界初のオートカレンダー機能搭載腕時計「カシオトロン」(1974年)や、音楽を聞ける腕時計「WMP-1V」(2000年)や写真の撮れる「WQV-1」(2000年)など、当時の先進的製品がずらりと並ぶ。
その奥には事務用情報処理装置「ADPS(アドプス) R1」(1989年)が展示。記念館説明員が「説明しづらい」というこの装置は、それまでコンピュータで何かをするときにはプログラミングの知識が必要だったが、事務系の業務内容を把握してさえいれば、プログラミングの知識がなくても帳票などを作成できるようにしたものだという。
ここでも、「習得が難しい」「技術を要する」作業を簡単に行えるようにという俊雄の考えがいかされている。
記念館のエントランスには次のような俊雄の言葉が掲げられている。
発明は必要の母
「必要は発明の母」は昔の言葉。
ユーザーが求めているものを作るのでは遅すぎる。ユーザーがまだ気づいてもいないような必要性を呼び起こす発明をしなければならない。
目の前にあっても、「自分には使えない」と思えば誰も手に取らない。つまり必要とはしない。しかし、「誰にでも使える」ような発明品であれば「自分にもできる」と思い、手に取るのではないだろうか。
俊雄は天才でありながら、わたしたちのように「できない」という気持ちを理解していたからこそ数々の発明ができたのではないだろうか。そんなことを考えながら記念館を後にした。
開館時間:9時30分〜16時30分
休館日:土日祝日・年末年始・夏季休暇など
見学申込:完全予約制
入館料:無料
住所:東京都世田谷区成城4-19-10
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