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「Netflix」の日本上陸がもたらすもの本田雅一の「TV Style」(2/2 ページ)

» 2015年02月05日 19時46分 公開
[本田雅一ITmedia]
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4Kも展開中、そしてHDRも

 Netflixの影響力が高まっている理由は、視聴数の爆発的な増加だけではない。最新の映像技術にいち早く対応出来る点も、放送局に対して特別な立ち位置を実現している理由だ。Netflixは昨年より最新映像コーデックのHEVCを用いた4K映像の配信サービスを開始している。ネット配信専門であるが故、15.6MbpsとNexTV-Fや「スカパー!」の4K CS放送に比べると低ビットレートではあるが、米国で販売されているほとんどの4Kテレビが対応しているため、放送局が対応できていない中にあって存在感を高めている。

 そして今年はいよいよ、HDR(ハイダイナミックレンジ)版の配信にも対応するとのこと。ハリウッド映画スタジオは年末に向けてHDRへの対応を進めており、とりわけワーナーブラザース、ディズニーといった大手が積極的だ。積極性はともかく、HDRをやらないと言っているスタジオは”ない”。受像機側はソニーが対応を発表済みだが、おそらくどのメーカーも同じように対応するに違いない。

今年のCESではあちこちでHDRの展示が見られた

 放送局もHDRには対応するものの、4K放送自身がまだ本格的に立ち上がっておらず、投資規模などを考えると独自にサービスの枠組みを拡大できるNetflixは、放送局にない独自の地位を築いている。

 日本でも4K配信が行われることが明らかになっており、アクトビラやNTTぷららなどの既存4K動画配信サービスなどとともに、4Kテレビユーザー向けには嬉しいサービスとなるだろう。なお、米国でのサービス料金は月額わずか8.99ドルで映画、テレビ番組とも見放題だが、日本での料金については明らかになっていない。

 最後にもう1つ。日本のコンテンツ制作者にとっては、新しいビジネスモデルが見えてくる可能性もありそうだ。日本オフィスのトップ就任するGregory K. Peters氏は次のように話している。「Netflixが持つ5700万人以上の会員に、日本の人気映画やテレビ番組を配信することも可能になる」。

 発表時にわざわざ、海外コンテンツを持ち込んで日本で配信するだけでなく、海外で日本のコンテンツを観てもらうチャンスですよ、とメッセージを発信しているのは、クリエイターやコンテンツオーナーに対して強い興味を抱いているからだろう。

 日本の映像コンテンツは、欧米市場への販売で苦戦している。日本製コンテンツの代表とも言えるアニメ作品も、子ども向け番組では根強い人気があるものの、近年急増した大人向けの深夜アニメなどは、海外に該当する放送枠がないためアニメ専門のネット配信サービスに登録する一部のファン向けに閉じてしまう傾向が強い。

 そうしたアニメの多くは製作委員会制で、かなり多くの”紐”が付いているため、既存の枠組みでの調整にはそれなりに高いハードルがあるかもしれない。しかし、文化的にニュートラルな作品であれば、映像ビジネスの幅を拡げる場となるだろう。

 ”Netflixありき”でビジネスモデルを考えた時、日本のコンテンツにどのような可能性が広がるのか。海外に拡がる5700万会員に通じるチャネルとして捉えれば、今とは違った作品作りの枠組みも考えられるだろう。

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