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ハイレゾ対応、超多機能な“リアルモバイル”ポタアン「SoundBlaster E3」をしゃぶり尽くすハイレゾ対応ポタアン検証(3/5 ページ)

» 2015年03月02日 16時33分 公開
[坪山博貴,ITmedia]
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Windows PCとの組み合わせで使い勝手と音質をチェック

Windows 7でのE3の再生デバイスとしてのプロパティ画面。48KHz/16bit、48KHz/24bit、96KHz/24bitをサポートするのが分かる

 次にWindows PC(Windows 7 64bit)と組み合わせての使い勝手と音質チェックをしていこう。PCは筆者所有のCore i5を搭載したノートPCだ。ドライバはパッケージには含まれておらずWebサイトからダウンロードする。ドライバと同時に専用ユーティリティもインストールされ、ASIOドライバも提供される。PCとの接続時には最大96KHz/24bitの再生をサポートし、本機の本来の能力が発揮されることになる。

 使い勝手で特徴的なのはやはりリモコン機能だ。iOSデバイスとの組み合わせ同様、5つのマルチファンクションボタンが機能し、音量はWindows側のボリュームをE3が制御する形になる。再生/停止、曲送り/曲戻しに関しては「Windows Media Player 12」「foobar2000」「VLC MediaPlayer」で問題なく操作できることを確認した。音楽をBGMにしつつ他の作業をPCで行っている時などを中心に、このリモコン機能はやはり便利だ。音量調整時にはディスプレイの右下に音量を示す表示がポップアップしてくれ、どの程度の音量設定かが音楽再生の前に確認できる。

今回試聴に利用したプレイヤーソフト「foobar2000」の設定画面。特定アプリからオーディオデバイスを占有できる「ASIO」(Audio Stream Input Output)にもE3のドライバは対応している

 試聴は再生アプリとして「foobar2000」を用いた。まず音源としてピックアップしたのは96KHz/24bitでe-onkyoから配信されている「ハイレゾで聴くオーケストラ」から、「組曲<惑星>作品32 第4曲: 木星―快楽をもたらすもの」だ。PCへの直挿しでの再生と比較すると一聴して分かるのは、管楽器のつややかさと低音のハリの良さ、音場の広さだ。PCの内蔵サウンド機能でもハイレゾ再生はサポートされているので、やはりPCの外側でD/AコンバーターとアンプがPCの外側に出ているメリットだろう。続いて「<スター・ウォーズ>組曲 第1曲: メイン・タイトル」をピックアップしても傾向は似ている。E3と組み合わせた方が音場が広く、音の響きがつややかだし、静寂の表現力も良好。112dbというSN比の高さが効いている。

 次にアコースティックな音源として伊藤真澄のサウンドプロデュースのトリビュートアルバム「Heart of Magic Garden2」からμ'sの名曲「Snow halation」のアコースティックバージョンだ。オリジナルアーティストのセルフカバーでボーカルはμ'sによって再収録され、96KHz/24bitで配信されている。この曲は前半はボーカル中心で伴奏は控えめ、後半ではぐっと伴奏も力強くなっていくアレンジだ。高域の表現力でE3が勝るのはもちろんだが、伴奏の主張が強くなる後半でもE3ではボーカルが埋もれず前に出てくるし、低域のキレや情報量も上。PC内蔵サウンド機能でもきちんとハイレゾらしい全域の音は聴こえてくるが、比較すると特に後半は平坦に聴こえてくる。また聴きこんでいくとアコースティックなボーカルの狭間に埋もれがちな楽器の音もE3の方がしっかりと再現していることに気がつく。

 Windows PCとMacとの組み合わせ時のみ利用できるエフェクト機能についても触れておこう。E3は特にスペックとしてDSPを搭載しているという記載はなく、スマートフォンなどとに接続時には利用できない機能なので、エフェクト自体はソフトウェアで行われていると分かる。特に有用と思えるのは「Crystalizer」と呼ぶ機能で、MP3やAACのような不可逆の圧縮音源で多かれ少なかれ失われる音のディテールを復元する役目を果たす。ポイントは帯域全体に対して処理を行うため、高域だけが強調されるような事がなく、ボーカルも引っ込まないことだ。やはり効果が大きいのはビットレートが低めの圧縮音源で、MP3の黎明(れいめい)期に標準とされた128Kbpsでの圧縮音源をいくつか「Crystalizer」の設定は初期値のまま試聴してみたが、1枚ベールをはいだように音のメリハリが良くなり、それでいて特定帯域が強調された感じがしない。曲調によって破綻(はたん)を感じることもほとんどなかった。

「Crystalizer」は「SBX Pro Studio」と呼ぶデジタルエフェクトの中の1機能で、ダイナミックレンジを最適化する事で音質を改善する。他の機能と合わせて設定を保存して、音楽ソースに合わせて切り替えることもできる(左)。イコライザーは11バンドで、もちろんカスタマイズした設定を保存しておくことも可能。珍しい機能ではないが、複数ある音楽ジャンル別のプリセットも効果を控えめにしている点は好感が持てる。ポータブルアンプの機能としては不要なのかも知れないが、無効化する事で音質へ悪影響がないならあって損はない(右)

 特に印象的に感じたのは1990年代初頭に一世風靡(ふうび)した「C-C-B」の「SINGLE COLLECTION」で、「Crystalizer」を有効にする当時のアナログシンセが生き生きと、彼らの特徴的な男性ツインボーカルがよりつややかに聴こえてくる。筆者は1980〜1990年代のアルバムをかなりの数128KbpsでMP3化し、原盤を処分してしまっているので、iOSデバイスとの組み合わせでは利用できないのがかなり惜しいと思うくらい。SurroudやBassも初期値では効果を控えめにしている点は好感が持てる。むろんこれらのエフェクト機能はハイレゾ音源の再生時にはほとんど必要性を感じないのも事実だが。

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