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困難に直面しても「楽しかった」――「ルンバ」登場までの軌跡iRobot研究(1)(3/3 ページ)

» 2015年03月04日 15時50分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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 金銭以外に得たものも多かった。例えば「My Real Baby」で得たB to C市場に関する知見は、後の家庭用ロボット販売に活かされる。またアングル氏自身は、「コスト(価格)より価値のあるロボットを作らなければならない」と強く意識するようになった。

2002年に発売された初代「ルンバ」

 そして2002年、人工知能を搭載した初の家庭用掃除ロボット「ルンバ」が米国で発売される。当初は機能的にもシンプルだったルンバだが、床の一部を重点的に掃除する「スポットモード」を搭載した「ルンバ プロ」(2003年)、「スケジュール」機能を追加した「ルンバ ディスカバリー」(2004年)など進化を続け、ヒット商品に成長する。昨年春にはブラシに代えて新開発の「AeroForceエクストラクター」を搭載した「ルンバ 800シリーズ」を発売。メンテナンスの手間を大幅に省くエポックメイキングな製品になった。

 「ルンバ」のヒットを受け、iRobotは2005年に米NASDAQへ上場。ロボット専業メーカーとして初のIPO(株式公開)であり、調達した資金は海外に販路を広げる契機になった。日本ではIPO前の2004年にセールス・オンデマンドがルンバの取扱を開始し、2013年までに約100万台を販売。「ルンバ」以外の家庭用ロボットを含めた全世界の累計販売台数は1200万台に及ぶ(2014年末時点)。

失敗の末に辿り着いた場所

 iRobotは、今年の6月で創業25周年を迎える。現在の社員数はおよそ500名だが、3人の創業者のうちロドニー・ブルックス氏とヘレン・グレイナー氏は既にiRobotを離れている。ブルックス氏は産業用ロボットを開発・製造するRethink Robotics(リ・シンク・ロボティクス)を設立し、2012年に単純労働に特化した双椀ロボット「バクスター」を発売して注目を集める。これまでロボットを導入できなかった中小規模の工場に合わせた価格と機能を持つ画期的なロボットだ。

 一方のグレイナー氏は、2008年にドローンを開発するCyPhy Works(サイファイ・ワークス)を興し、軍需産業に深く食い込んでいる。サイファイ・ワークスのドローンは、姿勢制御や行動ナビゲーションシステムを搭載した高度なもので、戦場での偵察など人間には危険な任務をこなす。

iRobot在籍中のグレイナー氏。写真はIPOの頃のもの

 明治大学の講堂で起業を目指す学生にアドバイスを求められたコリン・アングルCEOは、自らを投影しながら「成功した起業家も、最初のアイデアで成功したとは限らない。失敗の末、到達した場所で成功したんだ」と話した。

 「新しい事業を始めるといっても完璧なプランはなくてもいい。良いアイデアと良いチームがあれば十分だ」(アングル氏)。

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