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DSD再生の強化にバランス対応――ティアック「UD-503」の進化に迫る!魅惑のバランス駆動(2/4 ページ)

» 2015年06月10日 17時38分 公開
[山本敦ITmedia]
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バランス出力は2種類のモードが選択できる

 ヘッドフォン出力まわりにも注目しよう。一般的なアンバランスヘッドフォンは2台つないで同時に鳴らせる“ペアリスニング”に対応。バランス対応のヘッドフォンは2本の標準ジャックでフロントパネルにつなぐ。

フロントパネルには2つのステレオ標準ジャック(TRSフォン)を搭載。XLR端子としなかった理由はエレガントな外観を損なわないためでもある。アンバランス出力時にはペアリスニングも可能

 コネクター形状を汎用性の高いステレオ標準(TRSフォン)ジャックとした理由は、筐体をコンパクトなA4サイズにしながらフロントパネルのスマートなルックスも損なわないためという理由が1つある。ヘッドフォンのバランス接続については、まだ規格の標準化には至っていないものの、汎用性の高さや抜き差し時のハンドリングの容易さにもティアックのエンジニア陣は着目し、今後の普及拡大が期待できると判断して採用に踏み切った。なお、今後ティアックではシングル4極XLRのコネクターから標準プラグのL/Rに分岐する変換アダプターや専用リケーブルを、UD-503本体の発売時期に向けて商品化の準備を進めているという。

 バランス駆動は片側チャンネルのドライバーユニットをプラスとマイナスの2台のアンプでドライブする一般的なバランス駆動のほかに、TEACのコンポーネントとして初めて「アクティブ・グランド出力」にも対応した。昨今話題の「4極グランド分離出力」の場合は、アンプ2台を使ってプラス側の信号をヘッドフォンに送り、マイナス側の信号をグランドに戻す構造だが、「アクティブ・グランド出力」は、マイナス側をグランドに接続して、アンプ回路によってグランドを強制的にドライブして「0V(ゼロボルト)」の基準電位にキープするという方式になる。不安定なグランドを積極的に安定させることで、通常のバランス駆動よりもさらにノイズフロアが下がり、聴感上のS/Nが向上する効果が得られるという。

 アンバランス駆動と2種類のバランス駆動の各モードはフロントパネルのメニューボタンを押してから、入力セレクターの操作で切り替えられるほか、本体付属のリモコンに設けられた「HEADPHONE」ボタンから一発でスイッチできる。リモコンからの操作は切り替えが即座にできるので、音質の違いを聴き比べる際に便利だ。

付属のリモコン。「HEADPHONE」ボタンでアンバランスと2つのバランス接続のモードが切り替えられる。アプコンやフィルターの切り替えもボタン1つで手軽に行える

 本体内部には44.1kHzと48kHzで2系統の高精度専用クロックを搭載。デジタルアイソレーターも併用しながらアナログとデジタルの回路間を完全に分離しグランドも分けたことにより、USBだけでなく同軸/光端子からのデジタル出力時にも音質向上の効果を発揮する。さらに10MHz外部マスタークロックの入力にも対応したことで、より精度の高いクロックで同期させることもできる。ティアックとしては将来503シリーズのラインアップとして、A4サイズの単体クロックジェネレーターの商品化も検討しているようだ。

 デジタルフィルターの切り替えやアップコンバート機能もリモコンやフロントパネルのセレクターから操作できる。フィルターはDSDで2種類、PCMは4種類とフィルターOFFが選べる。それぞれの音の違いを組み合わせる機器や音の好みに合わせてながら楽しめそうだ。

PCMソースはDSDアプコン変換再生が可能

DSDデジタルフィルターは50kHz/150kHzのカットオフ周波数から選択

PCMデジタルフィルターは、オーディオ帯域外の信号を急峻にカットする「シャープロールオフ」と、緩やかにカットする「スローロールオフ」の2つの特性の、FIRフィルターとショートディレイフィルターを1つずつ計4種類と、フィルターOFFの5パターンから選ぶ

 アップコンバート機能はXilinxのFPGAを使ってカスタムメイドしている。リニアPCMのソースは最大352.8kHz/32bit・384kHz/32bitまでアップコンバードができるほか、44.1kHz系は11.2MHz、48kHz系は12.2MHzまでのDSD変換処理が行える。巷にはハイレゾの魅力が徐々に広まりつつあるものの、現実にユーザーが一番多く持っていて、頻繁に聴く音源はCDリッピングのソースであることも多い。ティアックがアップコンバート機能を充実させる背景には、あらゆる音楽ソースを変換再生も含めて自由に楽しめるようにという配慮もあるようだ。実際にアップコンバートのサウンドも試聴してみたが、音源の情報量が自然に充実して音のつながりがスムーズになる印象だ。DSD変換も緻密でクリアな音が楽しめる。

高精度電子ボリューム「TEAC-QVCS」を採用。ツマミの操作感も心地良い

−95dBから+24dBまで全帯域0.5dBずつ238段階で調整できる

 DA変換後のアナログオーディオ信号は、ボリュームアンプに到達するまでフルバランス処理となり、新たに「TEAC-QVCS」という電子ボリュームが採用された。本体には左右チャンネル、正・負で独立した合計4回路のゲインが可変するアンプを乗せて、ボリュームノブを回して生成されるコントロール信号で4つの回路を同時にコントロールしてボリュームを調整。これによりデュアルモノラル回路に伝送されるオーディオ信号の独立性を保ちながら、チャンネルセパレーションや位相特性の高いサウンドが実現される。従来のアナログ方式によるモーターボリュームよりも細かな調整が行えるほか、ボリュームノブがノイズを拾ってしまうことによる音質劣化も回避できる。オーディオ信号経路の無駄な引き回しも要らない。ボリュームは「−95dBから+24dBまで、0.5dB刻み」で238ステップの細かな調整に対応しており、音量のステータスはフロントパネルの単色有機ELパネルに表示される。

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