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「NETFLIX」を支える“小さなイノベーション”の数々4Kも10Mbpsから(2/2 ページ)

» 2015年06月18日 22時55分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]
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サービス開始時にiOS/Android用アプリも提供

 ほかの多くの動画配信サービスと同様、Netflixもマルチデバイス対応となる。既に国内大手テレビメーカーから対応テレビが発表されているが、下井氏によると「既に発売されている東芝、パナソニックの新製品のほか、シャープ、ソニーを合わせた4メーカーについては、今後発売するモデルは2K/4Kを問わず、すべてNetflixに対応する」という。同社の場合、メーカーが対応テレビを開発するとすべて米国に送ってチェックする。これが「どのデバイスでも均一な体験ができる理由だ」(同氏)。

リモコンの「NETFLIX」ボタン(写真は東芝レグザのもの)

 Netflix対応テレビは、リモコンに専用の「Netflix」ボタンが設けられている点も特徴といえる。これは北米向けなどの製品に搭載したところ、Netflixの視聴時間が大幅に増えたため。「北米では1契約あたりで月に30時間から40時間、平均して1日1時間程度は見られている計算になる」。なお、サービス前に「Netflixボタン」を押すとサービス案内サイトを表示する仕組みになっているが、ここでメールアドレスを登録するとローンチ当日に知らせてくれるという。「数は言えないが、かなりの数の登録をしていただいている」(同氏)。

現在、対応テレビで「Netflix」ボタンを押すとこのような画面が表示される

 ほかにもBlu-ray Discプレイヤー/レコーダー、家庭用ゲーム機、各種STB(セットトップボックス)など、さまざまな機器がNetflixに対応を表明しているが、今回はモバイルデバイスに関する新しい発表があった。同社によると、国内サービスの開始と同時にiOS/Android端末用の視聴アプリを提供するという。例えば外出先で見ていた映画の続きを自宅のテレビで視聴するといった連携も行えるようになる。

 「テレビのインストールベースが増えるまでに時間はかかるが、ポータブルデバイスなら(アプリ導入で)すぐに使用できる。既存のテレビについては、安価なデバイスも出てくるので、それを接続してもらう形になる」。なお、スマートフォンやタブレットといったポータブルデバイスでの視聴は米国でも「格段に」増えているという。

クリエイターズ・フリーダムが話題作を増やす

 Netflixが規模を拡大した理由の1つに、米国内で広く普及しているCATVの事業者が自社のSTB(セットトップボックス)でNetflixに対応したことが挙げられる。CATV事業者は自身でにも有料の多チャンネル放送を提供しているため、普通に考えれば競合サービスを利する行為にもみえるが、下井氏によると「3年ほど前から大きな動きになっている」という。理由はNetflixがオリジナルコンテンツに力を入れ始め、Netflixでしか見られないコンテンツが増えたこと。しかも2013年に制作した「ハウス・オブ・カード 野望の階段」がネット配信で初公開されたドラマシリーズとして初めてプライムタイム・エミー賞を受賞するなど話題になり、CATV事業者も無視できなくなったという。「同じようなことが日本でも起こるだろう」(下井氏)。

 自信の裏付けは、オリジナルコンテンツ制作が良い循環を生み出していることだ。「われわれはポリシーとして“クリエイターを信頼して託す”ことを徹底している。フォーマットに関しても同様で、これまでは13話で1シーズンというスタイルが主だったが、クリエイターにはその枠にとらわれず、壮大なスケールの作品を作りたい人もいる」(同社の大崎貴之副社長)。業界内で“クリエイターズ・フリーダム”と言われるほど、制作者の意見を尊重するNetflix。“金は出すが口は出さない”というクリエイターにとっては願ってもないスポンサーになっている。

 さらに海外配信という大きなメリットもある。同社の6200万件という巨大な顧客が潜在的な視聴者となることには、先日コンテンツ提供を発表したフジテレビも多いに注目していた。「ファンベースを広げることができれば、制作費にもそれを反映できる」(ピーターズ氏)。

黒澤作品などが好きで日本のコンテンツに造詣の深いグレッグ・ピーターズ社長。最近の日本ドラマでは「半沢直樹」や「深夜食堂」がお気に入りとか。次はTBSですか?

 日本語が堪能で国内の映画やドラマにも造詣の深いグレッグ社長は、「どのマーケットにもユニークな点はあるが、日本で感じるのはローカルなコンテンツが一番強いということだ。ユーザーの期待に応えるためにも、どんどん取り組んでいきたい」と話している。なお、ローンチ時のコンテンツラインアップについて大崎氏は、「粛々と…、具体的な企画の話を毎日している」というにとどめたが、同時に「既存作品のライセンス(による配信)に加え、新たにプレミア公開(=Netflixで初公開)のものも用意する。そして日本でプレミア配信を行うコンテンツは世界配信も行う予定だ」と話している。

社内の会議もドラマチック

 今回の説明会では、集まった報道関係者にNetflixの新オフィスが一部公開された。今年1月に引っ越したばかりというだけあって、どこも真新しく洒落た空間だ。

オフィスの入口

入口周辺には同社が手がけたコンテンツのポスターが多数

大崎貴之副社長の執務室。効率重視で立ったまま仕事をすることも

 中でもユニークなのは、会議室の名前がすべて同社が手がけた映画やドラマのタイトルになっていたこと。「SENSE8」や「DAREDEVIL」もあった。コンテンツを大切にしていることがよく分かる。

「SENSE8」という会議室は、ウォシャウスキー姉弟制作のドラマチック・スリラーにちなんで命名。スリリングな会議になりそう

マーベル原作「DAREDEVIL」も。向こう見ず(daredevil)なプレゼンは是非ここで


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