よいモノを長く使うために――LED照明の寿命を飛躍的に延ばした革新技術「ヒートパイプテクノロジー」テクノロジー解説<7>(2/2 ページ)

» 2015年06月24日 10時00分 公開
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 実はこのヒートパイプである銅管のなかは真空に近い状態になっていて、中にはごく少量の水が入っている。水は熱せられるとすぐに蒸発し、素早く熱を取り去る。つまり“気化熱”を応用しているのだ。日本でも夏になると庭や道路に“打ち水”をするが、それはまいた水が蒸発する際に、周囲の熱を奪って涼しく感じるため。また人間が汗をかくのも、素早く蒸発して体内の熱を排出するからだ。

ヒートパイプテクノロジーの概要

 その後、さまざまな太さや細さの銅パイプを使い、放熱性を高める実験を繰り返した。22.5ミリ径の銅パイプは、内側が繊維のようなメッシュ状になっており、直接ヒートシンクとなるアルミニウムとつながっている。LEDモジュールが発した熱が銅管に伝わると、水が熱を奪って蒸発する。水蒸気は上側へ移動してアルミニウムに熱を伝える。このとき、水蒸気は冷えて水となり、銅管の内側を伝ってふたたびLEDモジュールのほうに移動する。パイプの中では煙突効果が生じて素早く熱が伝わり拡散される。

 もちろん銅パイプの太さや長さ、厚み、中に入れる水の量まで、このような熱の循環を最大限に活かせるように計算されたもの。効率的にLEDの熱を取り去ることでLEDモジュール周辺は約55度という低い温度を維持することに成功した。これが「ヒートパイプテクノロジー」の仕組みだ。

 日本国内で最初に発売された「ジェイク ダイソン ライト」の「CSYS™」(シーシス)は、LED部を支えるアームの部分に1本の銅管が仕込まれている。先端に搭載された8つのLEDモジュールからは約553ルーメン、また1平方メートル当たり587ルクスの照度が得られ、熱はアームを兼ねたアルミニウム製のヒートシンクを通して放散する。

卓上タイプの「CSYS ™(シーシス)desk」

 スリムな本体には「3 Axis Glide」(アクシスグライド)モーションという、滑車の原理を利用したカウンターウェイトシステムや減摩軸受 (アンチフリクション・ベアリング)を用い、“指で触れるだけ”で照明部の高さや回転を調整できる仕組みを備えた。タッチスイッチ式の調光システムも合わせ、使い勝手の面でも一般的な照明器具とは一線を画すものに仕上げた。

減摩軸受 (アンチフリクション・ベアリング)部分。水平方向にも27.5センチ可動する

 一方、今後登場するシーリングライト「Ariel™」(アリエル)では、9000ルーメンという大光量のLEDモジュールを冷やすため、その裏側には6本の銅管を通している。その先にはヒートシンクが幾重にも並び、筐体全体を使って熱を放散する仕組みだ。実用性とデザイン性を兼ねた機能美ともいえるAriel™は、太陽光パネルを広げた人工衛星を意識したスタイル。製品名も英国最初の人工衛星の名前が与えられている。

「Ariel™(アリエル) down-light」のLEDモジュール部分

大きなLEDの下では6本の銅管がこのように組み合わされている

銅管の先はヒートシンク

 どちらの製品も1日に12時間使用した場合でも37年から40年は利用できるという長寿命だ。LED自体の寿命は約18万時間と既存製品の4倍から6倍に及ぶ。タイプは異なるが、どちらも“一生もの”といっていいLED照明に仕上げられている。


 2015年5月、製品発表のために来日したジェイク・ダイソン氏は、価格設定について質問され、こんな風に話していた。「理解してほしいのは、優秀なエンジニアリング、革新は安くはないということだ。同じようにクラシックなデザイナー家具も高価だが、それはテクノロジーとデザイン性に優れ、何十年も使えるからだろう。もしかすると、これ(シーシス)だってデザインクラシックになるかもしれない」。

 例えばシーシスをイームズチェアの横に置いても決して見劣りはしないだろう。実際に触れてみればデザイン性の高さだけではなく、軽やかな操作性や長寿命という点でも十分にデザインクラシックの素養を十分に持っている。「ジェイク ダイソン ライト」の目指すものが垣間見えた気がした。

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提供:ダイソン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia LifeStyle 編集部/掲載内容有効期限:2015年6月30日

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