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ポタフェスは「音版コミケ」? そして気になる今後――「ポタフェス Limited」ロングインタビュー(後編)(2/4 ページ)

» 2015年07月24日 18時32分 公開
[天野透ITmedia]

「ポータブルオーディオ」を理解してもらうのに一苦労

 どの会場でも歓迎されたイベントとなったが、開催にあたっては苦労が絶えなかったそうだ。広報担当の松田氏は、3カ月間におよぶ過密スケジュールの中、8都市の地元メディアに向けてあわただしく広報活動をする難しさを語る。

松田氏:広報担当者の意見としては、今回のキャラバンで全国各地の動向がよく見えて、生の声も聞けました。こういった感じで東京外のお客さんと触れたのは初めてです。

 正直いって、3カ月というかなり厳しいスケジュールで、大きな事故もなく無事にやりきったと評価しています。成功だと思いますよ。感情的に「やりきったな」という思いです。

――黒船来襲(前編参照)や天候の試練はありましたが、事故やお客さん同士のトラブルとかいった失敗はないですよね。

岡田氏:ですが結構な過密スケジュールの上に、5月には他のイベントも重なりましたので、出展者の皆さんはかなりご苦労されたのではないでしょうか。感謝と申し訳ない気持ちが入り交じっています。ここは改善点ですね。

過密スケジュールは改善点という岡田氏

――確かに、4月と5月は1週間のフライアウェイが複数回ありました。

岡田氏:沖縄遠征などもあったりね。

――3カ月で8都市というのは、かなりのハードスケジュールですよね。例えば春と秋に分けたり、その上で各都市は隔回開催にしてみたりといった工夫はできそうな気がします。

岡田氏:最初ですから、勢いで乗り切った感はかなりあります。その分あちこちに迷惑をかけちゃったかな。まっちゃん(松田氏のニックネーム)にしても、準備期間が短いから、毎週プレスリリースを作るのも大変だったんじゃないの?

松田氏:特に各エリア開拓は大変でしたね。各地方の有力新聞社やテレビ局に広報活動をしたのですが、その宣伝文句が「(株式会社)タイムマシン」で「eイヤホン」で「ポタフェス」と並ぶわけでしょう? 向こうにすると「何それ?」となるのが普通ですよね。

――ソニーなどが頑張ってハイレゾの普及活動をしてますが、一般の人にとってポータブルオーディオといえばiPod止まりかもしれませんね。

松田氏:そこからイヤフォンのマーケット規模とかを説明するのに一苦労でしたよ。それが毎回なんですから。最後の方は慣れてきましたけれど。加えて「期間が短い」っていう脅迫観念もありました。話が分かりそうなジャンルの記者がいない時も多いですから。なので、名古屋でメーテレ(名古屋テレビ)の撮影クルーを呼べた時は本当に「報われた!」って。

岡田氏:テレビ局の人もビックリしていましたね。(会場の盛り上がりが)「想像以上でした」って言っていましたよ。

松田氏:あまりにお客さんが多いので、当初1時間ほどだった取材予定を急きょ2時間に延ばしました。通常、この手のイベントをやる時は前もって広告などの宣伝活動を含めた広報での仕掛けを仕込むんですけれど、今回は全部ぶっつけだったんです。正直名古屋の雑居ビルを見た時は「どうしようか」と頭を抱えましたよ。そこからの盛況ぶりはとてもドラマチックに感じました。

松田氏は「苦労自慢はあまりしたくないんだけど」と言いながら、タイトなスケジュールの中で厳しい新エリアの開拓をこなした苦労を語った

気になる今後の全国展開

 盛況のうちに幕を閉じた全国キャラバンだが、こうなるとやはり気になるのは「次回以降」の話だ。「来年、再来年と続くのか」とたずねてみると、事務局長の岡田氏は「やり残したこともいくつかある」とした。岡田氏は既にいくつかの構想を持っているようだ。

――各地でこれだけ多くの方がいらっしゃった上に、異口同音に待望論が出ているので、やはり次回以降の開催は気になります。今後はどんなことを予定していますか?

岡田氏:実は今回のキャラバンで1つ心残りがあるんです。「日本全国」と言いながら北陸・信越に行けなかったんですよね。決して忘れていたわけではありません。

松田氏:それ気になるなぁ。なんで北陸に行かなかったの?

岡田氏:北陸って広すぎて、場所の選定が難しいんですよ。事前のWeb販売データ調査では決して悪い数字ではなかったんですけれど、いざ場所選定の段になると「長野の人が金沢に行くか?」ってなっちゃって。

――でもこの春に北陸新幹線が金沢まで開通したじゃないですか。あれの営業開始は奇しくも初日である名古屋の日でしたよね。今後は充分ありえる移動エリアだと思いますよ。

岡田氏:北陸に関してはいずれ、別の形で何かやりたいと思っています。今はまだ公表できないこともありますが、北陸の方は「もうしばらくお待ちください」ということでお願いします。

松田氏:移動エリアといえば、名古屋から大阪店に行く人は多くはないみたいですね。さっきも話したけれど「往復代を使うならここに来るまで待って、交通費分を機材費にかける」っていう声をいくつも聞きました。

岡田氏:物販コーナーの話をすると、客単価が一番高かったのは広島で、次に名古屋、福岡、札幌という感じです。特に広島は強烈で、数字を出すと4万円くらいの結果になりました。これって他の場所の1.5倍なんですよ。もっというと、いつものe☆イヤホンでは客単価が1万5000円もいかないくらいです。いかに広島が凄いか分かっていただけますか。

キャラバンとともに全国を巡ったメッセージボードには、全国のオーディオファンからさまざまな声が寄せられた

――普段の倍以上ですか。いくらイベントとはいえ、それはなかなかないですよ。

岡田氏:それだけ待っていた人が多かったんでしょうね。小売で客単価が4万円っていうと「お前バイクでも売ってるのか」(笑)というレベルです。販売数量トップは、やはり来場者数が一番多い大阪でした。福岡はイヤフォンが一番売れたというのも面白いですね。

 こうして並べてみると、意外とWebとはデータが違うというように見えます。こういうことが分かったのも大きな収穫ですね。他にも行きたい所はいっぱいあるので(特に北陸!)、それはおいおい考えていきたいと思います。今回のアイデアは良かったと思うので、場所は吟味し直し、今後も是非続けたいですね。

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