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ハイレゾが変わる――英Meridianのボブ・スチュアート氏に聞いた“MQAの最新情報”と「PHA-1」の“隠し機能”(4/4 ページ)

» 2015年07月28日 13時00分 公開
[山本敦ITmedia]
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PHA-1の“隠し機能” ――「デュアル・ドライブ」のサウンドを聴く

 今回はヘッドフォンアンプ「PHA-1」による「デュアル・ドライブ」のサウンドを実際に確かめてみようと思う。用意したのはゼンハイザーのフラグシップヘッドフォンである「HD 800」。本機に元から付属しているのは3極シングルエンド仕様のケーブルだが、今回は特別にハイレス・ミュージックが本機の純正ケーブルをベースに製作したリケーブルも合わせてお借りしながら比較試聴を行った。特製ケーブルは、元々シングルエンドの純正ケーブルのアンプ側を左右に分岐して、3.5ミリのピン端子に標準端子への変換アダプターをつないでいる。アンプの設定は「ヘッドフォンアンプ専用モード」にして、ASPはオフを選んだ。

Prime PHA-1とHD 800の組み合わせを筆者のデスクトップ環境でテスト

ゼンハイザー「HD 800」に対応するデュアル・ドライブ用のケーブルを特別に用意。右が通常のシングルエンドタイプの純正ケーブル

 はじめにノラ・ジョーンズのボーカルから聴く。曲はアルバム「Come Away With Me」から『The Nearness Of You』。シングルエンド・ドライブの音と比べて、デュアル・ドライブでは声の立体感をさらに克明に捉える。S/Nがぐんと高まって、細部の描写が際立ってくるのは伴奏に付くアコースティックピアノの音も同じだ。ボーカルとピアノ1台のシンプルな演奏だが、楽器どうしの前後の位置関係がよりはっきりとしてきて、特にボーカルがますます側に近づいてくるような生々しさがたまらない。ピアノとの掛け合いによる真剣勝負の空気感までもが伝わってくるようだ。思わず同じ曲を何度も聴き直してしまった。

 オーケストラはヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団『ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」』から、「第4楽章:フィナーレ(アレグロ・コン・フォーコ)」を聴いた。デュアル・ドライブのメリットは、より明瞭なチャンネルセパレーションが得られることによって、全ての楽器の音の粒立ちがよくなって、立体的な空間表現もステージが一段と上がるところにありそうだ。特に低域の音像がかちっと定まることで、重心が安定して演奏全体に緊張感が生まれる。打楽器や弦バスの音色は肉付きがガッシリとしてきて、空気ごと震わせるような鋭い打ち込みが腹の底を突いてくる。高域も弦楽器や金管楽器の音色に伸びやかさがプラスされるようだ。ピアニッシモの微小な音もより細部まで表情がみえるようになった。

シングルエンドのケーブルとデュアル・ドライブ用のリケーブルをつなぎ替えながら試聴を行った

 小沼ようすけのアルバム「GNJ」から『Jungle』では、エレキギターの音色の彫りが深くなり、余計な付帯音やひずみのないクリアなトーンを楽しめた。デュアル・ドライブの効果は、さらにリッチな余韻の広がり感にもつながっているように思う。エレキベースの音色はやはり重心がどっしりと低く安定して、うねるようなグルーブに触れられる心地よさがいい。奥に隠れていた音楽のエネルギーが強引にではなく、いとも自然に引き出されるような説得力に富む演奏だ。シングルエンド・ドライブと比べて確かな違いが実感できた。

 メリディアン・オーディオの革新的な技術と製品は、キーマンであるボブ・スチュアート氏のオーディオに対する強い情熱と好奇心から生まれてくる。スチュアート氏の飽くなき探求心がダイナモになって、MQAテクノロジーや“Prime”シリーズがこれからどんな進化を遂げていくのか、とても楽しみだ。

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