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「300B」と「KT88」が同居――異色の真空管ヘッドフォンアンプ、フォステクス「HP-V8」を見てきた二子玉川で(2/2 ページ)

» 2015年08月07日 22時22分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]
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 もちろん両方を出力管として使っているわけではない。同社によると、「KT88」は電源のドライブに利用しているという。「ヘッドフォンをドライブするための整流ノイズ−80〜90dBを作るためにトランジスタを使用することもあるが、それではトランジスタの音になってしまう。そこで真空管を代わりに使うことにした」。ただし、電源を安定させるために500ボルト耐圧の電源コンデンサーが必要になったり、高電圧のため監視回路を追加するなど苦労も多かった。

中央奥の2つが「300B」、両脇が「KT88」

 一方の300Bも振動に弱いなど扱いの難しい真空管だ。これを生かすため、別途ヒーター電源を設けたり、徹底した振動対策を施している。「真空管をマウントしている台にステンレスより振動の収束が速い無酸素銅を使用し、脚にはゼロバンプの特殊ゴム素材のインシュレーターを用いた。外部からの振動を拾わないようにしている」(同社)。

 出力は32オーム時で2ワット+2ワットに抑えているが、回路としてはヘッドフォンアンプというより、通常の真空管アンプに近い。事実、「出力をかせごうと思えばスピーカーもドライブできる」という。またヘッドフォン出力では、出力トランスの巻き線を倍にして+/−を作るという珍しい手法でバランス接続に対応した。

 一方で入力はアナログ(アンバランス)1系統というシンプルさ。これは「フルバランス構成にすると回路規模が大きく複雑になってしまい、音質的なメリットも少なくなる」ためだという。「これまでHP-P1などポータブルアンプを出してきたが、よりアナログ的な部分でFOSTEXの技術を投入したもの、かつ他のメーカーが手がけていない物を作りたかった」。

ヘッドフォンのバランス接続にも対応

入力はアナログRCA(アンバランス)のみ

背面はアナログ入力のほか、メインスイッチ、設定用ディップスイッチ2つというシンプルさ。「DIRECT INPUT」をオンにするとデジタルボリューム回路をパスするようになる

 高周波ひずみやS/N比という点では不利な真空管を使ったヘッドフォンアンプでありながら、115dBというS/N比を実現した「HP-V8」。同社では年内には市場投入する方針としているが、価格は決まっていないという。なお、フォステクスでは8月8日(土)14時から同ショウルームで「HP-V8」の発表会を行う予定だ。

ショウルーム概要

所在地:東京都世田谷区玉川3-9-3 Stream Tamagawa 1F-A (東急田園都市線・大井町線「二子玉川」駅から徒歩3分)

営業時間:11:00〜19:30(水曜定休)


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