さて、この夏出会ったオーディオ機器の中で、もう1つ強く印象づけられた手頃な価格の製品がある。それがDAC内蔵型プリメインアンプのNuPrime(ニュープライム)「IDA-8」だ。
ニュープライムは、わが国のオーディオファンにお馴染みとなった新進オーディオメーカー、米NuForce(ニューフォース)から派生したニュー・ブランドである。今後はニューフォースがカジュアル・オーディオを、ニュープライムがハイファイ・オーディオを担うという役割分担になるようだ。
ニュープライムの第1弾製品が、昨年発表された「IDA-16」というDAC内蔵プリメインアンプだったが、その弟モデルとして登場したのが、本機「IDA-8」だ。出力(100ワット+100ワット、8オーム)も価格(13万円)も「IDA-16」のちょうど半分。パワー段は、同社独自のフィードバック回路を用いたPWM方式によるデジタルアンプが採用されている。ニューフォース製品ではスイッチング電源が採用されることが多かったが、本機はトロイダルトランスを擁したアナログのリニア電源だ。ボリュームもラダー型デバイスを用いた0.5dB刻みのアナログ・タイプが採用されている。
注目すべきはD/A変換セクションで、USB入力については384kHz/32bitまでのPCM と11.2MHzまでのDSD信号に対応している。ヘアライン&アルマイト仕上げの超薄型デザインはとてもスタイリッシュで清新な感覚に満ちており、新時代のプリメインアンプ像を鮮やかに提示しているように思える。
20万円以下のDAC内蔵アンプで11.2MHzまでのDSD信号に対応した製品は他に思い付かず、USB端子に「foober2000」をインストールしたWindowsマシンを接続して各種ハイレゾファイルを聴いてみた。やや細身ながらハイがすっと伸びたサウンドで、隈取り鮮やかに音楽を描写する。OTOTOYから配信されている11.2MHz DSDの丈青のピアノ・ソロを聴いてみたが、広大な空間にピアノの玉のように美しい響きがくっきりと浮かび上がり、その表現力の豊かさに瞠目(どうもく)した。この値段で、こんなハイエンドライクな音が聴けるというのは、もう“事件”というほかないだろう。こんな製品でハイレゾファイルを用いた本格的なスピーカーリスニング体験が始められる人は、とても幸せだと思う。
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