そして今回のIFA 2015で最も顕著だったのが中国メーカーの台頭だ。TCLのように、すでに2000年代初頭からThomsonやAlcatel(Alcatel-Lucent)との提携でジョイントベンチャーを作って欧州ブランドでの現地展開を進めているケースもあったが、ここ最近は中国企業の傘下に入る欧州メーカーがあったり、あるいは海外メーカーが欧州事業を撤退するタイミングでブランドを入手して現地でのプレゼンスを高めるケースがみられたりと、以前にも増して市場へ食い込む様子が散見される。中国企業が欧州でのビジネスを強化し始め、IFAでの展示を行うようになったのは比較的最近だが、その展示の特徴は「中国ブランドを前面に出さず、現地ブランドを極力活用する」という点にある。
中国メーカーの欧州進出では先駆者となるTCLは、以前まで同地域でのプレゼンスを高めるために「ジョイントベンチャーのブランド色を薄めてTCLの名前で売り込んでいく」ことを主眼にしていたといわれ、実際にジョイントベンチャー自体の効果を疑問視する声も大きかった。だが今年のTCLの展示を見れば分かるように、依然として「Thomson」や低価格スマートフォンの「Alcatel Onetouch」の専用展示スペースが用意され(ともにフランスの企業ブランド)、どちらも提携相手はすでに事業から撤退してTCLの事業主体となっているにも関わらず、ブランドがそのまま維持されている。特にAlcatel Onetouchに関しては先日のNokiaのAlcatel-Lucent買収を受け、ジョイントベンチャーの事業がそのままTCLの100%子会社になるにも関わらず、むしろ「Alcatel」ブランドを強調しているようにさえ思える。
同様の現象は、同じく中国企業であるSkyworthにもみられる。同社は今年5月にドイツのテレビメーカー、Metzを買収しており、今回のIFA 2015では合同ブースでの出展となった。Metzは以前のIFAでも「Made in Germany」をセールスポイントにした展示を行っていたが、今回のSkyworthとの合同ブースでもこれはそのまま引き継がれている。「国産」を強調するのはそれ自体がブランドであることを示しており、これはおそらく今後もMetzブランドが維持され、同じように「Made in Germany」が強調され続けていくのだと考えられる。IFAでは中国企業のLenovoがドイツの「Medion」ブランドのテレビ製品を展示していたが、これも買収後に事業の効率化は行いつつも、ブランドの価値や販売網はそのまま生かしてビジネスを極力続け、中国の自社ブランドを必ずしも前面に出さないことの現れだろう。
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