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大切なのは“イタリアニティ”――デロンギのモノ作り哲学滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(5/5 ページ)

» 2015年11月11日 21時52分 公開
[滝田勝紀ITmedia]
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質の高さを追求する緻密な生産方法

 トレヴィゾにある本社からクルマで約10分ほどのところに、イタリア本国内では唯一の工場が存在する。ここでは、同社を牽引する世界でもNo.1シェアを誇るエスプレッソマシンが作られている。

デロンギのデザイナー、フランチェスコ・フィオロット氏。工場にもデザイナーが所属するなど、ユニークな点がみられるのも同社ならでは

 デロンギのエスプレッソマシンは例外なくイタリア国内の工場で作られているが、その理由についてフィオロット氏が教えてくれた。

 「エスプレッソマシンはその種類によって、組み立て工程が微妙に違ったり、国ごとに細かく対応しなければなりません。オートメーション化を追求しすぎてしまうとかえって具合がよくないのです。スタンプのように同じものを作るのではなく、販売する国によって違う機能を載せなければなりません。そして量よりも質の高さが大切になってくる製品だからこそ、この工場は特に人が多くいるのです」

エスプレッソマシーンの心臓部でもあるコーン式グラインダー。技術革新の末、数年前から自社生産できるようになったという

 工場内でも心臓部であるグラインダー部をはじめ、すべてを自社生産している。そして驚いたのは、人間が関わるからこそ可能になるアナログなテスト方法。アッセンブリのラインが並ぶ工場なのに、油やオイルなどの臭いではなく、コーヒーの香りがほのかにただよう。

 「豆の粒度や挽き目はおいしいエスプレッソを淹れる上で大切な要素です。エスプレッソマシンシリーズに搭載されたコーン式グラインダーは低速回転でコーヒー豆を挽くため、摩擦熱が発生しにくく、エスプレッソの命ともいえる揮発性のアロマを逃がさずに豆を挽くことができますが、その調整などが非常に重要です。だから、製品となったものに不具合がないかを確認するため、実際の豆を使って生産ラインの途中でチェックしています」

実際のコーヒー豆を使用し、均等に挽けるかどうか全数検査を行う。原料段階から完成品まで段階的にシリアル番号でひもづけ、不具合が出た場合、いつでもさかのぼれるようになっている

 緻密なモノ作りは、製品化前のプロトタイプでも同じ。非常に高い精度で製作され、本物に近い形で塗装も行い、仕上がりを確認する。デザイナーが工場にも常駐しているのはそのためだ。

試作品も段階的にいくつも作る。外装のステンレスなどには実際に塗装してカラーや仕上がりの質まで確認する。3Dプリンターなども導入するそうだ

 「人は多くてもしっかりと効率化されているところもあり、非常にバランスがいい工場だと自負しています。例えば、消費者の手に渡った製品に不具合が発生した場合、そのシリアル番号によって、あらゆる生産/組み立て工程のほか、原材料までさかのぼることができるため、素早く問題を解決できます。ここまでできるのは、特に自社製品に対して思い入れが強い工場だから。プロトタイプの段階からすべて自分たちの手で作り上げられるのも、この工場ならではだと思いますよ」

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