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進化し続けるロボット掃除機、ダイソン「360Eye」のスゴイところ滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(2/3 ページ)

» 2015年11月23日 18時28分 公開
[滝田勝紀ITmedia]

他社製品と違うところ

 改めて「ダイソン 360 Eye」を見て気づくのは、他社製品と大きく異なる外観だろう。幅の狭いコンパクトなボディーに特徴的なサイクロンの形状、魚眼レンズ付きのカメラ、そして戦車のようなキャタピラなど。見た目は1年前から全く変わっていないが、どのような考えでデザインしたのだろう。

 「ダイソンの開発思想として、見た目は“機能ありき”です。ジェームス・ダイソンの個人的な感覚というか、彼自身の情熱みたいなものはデザインに反映されているかもしれませんが、あくまでも実用性が優先。例えば、取っ手周りなどは見た目だけ考えると直線的なカッティングの方がいいと思うのですが、持ちやすさを考えると丸みを帯びているほうがいい。持ちやすいということが大事だからです。ダイソン製品は機能にデザインが宿っていますが、必ず“機能ありき”で考えているという意味で、キャニスターもロボットも変わりません」。

駆動輪のキャタピラ

 駆動輪のキャタピラは、じゅうたんの上や段差を乗り越えるには有利にみえるが、実際もそうなのだろうか。

 「以前、開発した『DC06』には大きな車輪が付いていました。とても大きいので段差を乗り越えるには有利なのですが、とにかく大きくて全体を小型化しにくいといった問題がありました。そこで小さな車輪とベルトを組みあわせ、走破性を犠牲にすることなく小型化を図ったのです。またキャタピラの採用によって開発の手間も削減できました。車輪はスリップすることがあるため、(移動の)距離計測などソフトウェアとの連動にもかなり気を使わなければなりません。しかしベルト駆動ならスリップしませんし、非常に直線的な動きになりますので、実はソフトウェア側で想定したコースを外れることが少ないのです。ナビゲーションシステムとの連動も非常にしやすかったですね」

「DC06」。商品化はされなかった

 次に「Radial Root Cyclone(ラジアルルートサイクロン)テクノロジー」について。ほかの掃除機に比べてサイズ面の制約が大きいロボット掃除機で同様のパフォーマンスを発揮させるには相当の苦労があったのではないだろうか。

小型でもほかのダイソン製品と同じサイクロン技術が搭載されている

 「その通り、サイクロンはキャニスター式やコードレス掃除機から技術開発が始まったものです。サイクロンの性能を損なわず、ロボット掃除機に搭載する際、最低12センチという高さが必要でした。とくに強調しておきたいのは、よく競合製品で『ベッドの下にも行きます』と言っていますが、実際にベッドの下はどれだけきれいになっているのでしょうか? 360 Eyeはサイクロン式であるとともに、小さくてもパワフルなモーターを搭載しています。以前、開発を断念した『DC06』の時は、このモーターとサイクロン構造を小型化することができませんでした。バッテリーも54個入っていて、重量も相当なものでしたから。でも今回は、それらの開発にすべて成功しています」

 そのモーターは、自社開発の「DDM(Dyson Digital Motor) V2」で、毎分最大7万8000回転というロボット掃除機の中でも群を抜いたスペックを持つ。しかし、DDMの最新バージョンは「V6」。あえて世代の古いモデルを採用したのだろうか。

「DDM(Dyson Digital Motor) V2」

 「DDM V6は、ロボット掃除機には少し大きかったのです。360 Eyeの内部は非常に複雑な構造で、容積もかなり限られています。小型化のためにもDDM V6を積むことはできませんでした。それでもほかのロボット掃除機と比べて4倍の吸引力を実現しています」

 オールドレッド氏は続ける。「サイクロンによるゴミを分離する力は、フィルターに頼る他社製品とは大きく異なる部分です。また単純に吸引力を上げただけではなく、吸い取ったカビやホコリ――アレルゲンを閉じ込めておけなければ意味がありません。360 Eyeはそうした対策が施されています。これまで培ってきたダイソンの掃除機に関する技術は、今回のロボット掃除機にしっかりと受け継がれているのです。あとは機体と同じ幅のブラシで掃除ができること。効率良く掃除できる点が他社製品と異なります」

赤い部分はナイロンブラシで、カーペットなどの奥に潜むホコリやゴミをかき出す。黒い部分はフローリングの微細なホコリなどを取り除くカーボンファイバーブラシで、静電気で吸いついてしまっているホコリなども取り除く。複数の素材を組みあわせ、フローリングやカーペットなどを幅広くカバーできるところも他社との差別化ポイントだという

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