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血圧計にラジオ体操も ゲーセンはシニアの社交場になれるのか(2/2 ページ)

» 2015年12月08日 06時00分 公開
[村上万純ITmedia]
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名前は知らない顔なじみの“メダル仲間”

 1人で黙々とメダルを投入していた70代半ばほどの女性は、「通い始めて2年くらいかな。暇つぶしのため、ほぼ毎日来ています。11時〜14時くらいまで遊んで、メダルがなくなるか飽きたら帰りますね」と話す。

 毎日遊んでいて飽きないかと尋ねると、「飽きるけど、家でテレビを見ていてもつまらない。手を動かしていろいろ考えると、老化防止にもなるし。前はパチンコもしていたけど、あっという間にお金がなくなり、私何してるんだろうって、ある日気付いて。パチンコでもゲーセンでも顔なじみはできるけど、特に会話はないです」と答えてくれた。

 来店のきっかけは孫だった。孫が他のゲームで遊んでいる間、暇だったので、試しにメダルゲームに触れてみたという。「そのときは全く遊び方が分かりませんでしたが、孫がいろいろ教えてくれて。でも、孫も大きくなって学校や部活が忙しいので今は1人で遊んでいます」と語る顔はどこか寂しげだ。だが、「メダルゲームは安く長く遊べるのが魅力で、何度か大当たりが出たこともあるんですよ」と笑顔も見せる。

photo 店内はメダルゲーム機を中心に、パチンコやスロットマシーンも充実している

 “メダル仲間”と談笑していた60代ほどの女性は、ブランクはあるものの12年来の古株だ。週1で通い、1日3時間で5000円前後の現金をメダルに替える。「みんな顔なじみであいさつや雑談はするけど、名前は知らないし、お互い聞きもしない。そんな仲ですね」と語るその表情は生き生きとしており、「晴れの日はグランドゴルフに行くんですよ。今日は雨だからメダルゲーム。気ままに暮らしてます。今日は調子が悪くて隣の人が朝から大当たりみたいで」と笑顔で語る。

 こちらも同じくひ孫を遊びにつれてきたことが来店のきっかけ。「4歳だったひ孫も今は高校1年生。サッカーに夢中で今はあまり遊ばなくなりましたね。今はこうやってメダル仲間がいますので」

 取材当日はパチンコやスロットマシーンはいずれも空席で、安く長く遊べるメダルゲーム機が人気を集めていた。時折スタッフや客同士で談笑する人たちはいるものの、基本的には個人プレイで黙々とメダルを増やすことに集中しているようだ。シニアの社交場という側面もあるが、1人でも気楽に立ち寄れる暇つぶしと捉えているお年寄りも多そうだ。

photo 幅広い層で楽しめるゲームをそろえる
photo 子供向け機器も多い

 総務省統計局の人口推計によると、9月15日時点で65歳以上の高齢者人口は3384万人。日本の総人口に占める割合は26.7%と過去最高で、今後もますます増加していく見込みだ。まだゲームセンターの主要な客層は10〜20代の若者だが、彼らが学業や仕事に専念している平日の隙間時間を支えるシニアや主婦たちの市場も見逃せない。

 残念ながら格闘ゲームや音楽ゲームに興じるお年寄りには会えなかったが、中には1970年代後半の「スペースインベーダー」ブームで当時ゲーセンに通っていた人たちもいるのだという。

 それでは、現役の若者・中年ゲーマーたちも定年後、またゲーセンに舞い戻ってくる可能性はあるのだろうか。そのとき彼らが遊ぶのは格闘ゲームではなく反射神経を必要としないメダルゲームなのか、クレーンゲームなのか、それとも――。

 ビデオゲーム中心の古き良きゲームセンターの風景はもう過去の記憶と化すのか。「ゲームセンターはなくなりませんよ」と話すのはタイトー担当者。その発言の真意とは? 次回は同社が語るゲーセンの生き残り戦略を紹介する。

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