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気分やインテリアに合わせて6つの変化が楽しめるスピーカー、ソナス・ファベール「カメレオン」潮晴男の「旬感オーディオ」(2/2 ページ)

» 2015年12月10日 11時57分 公開
[潮晴男ITmedia]
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 2Way構成の「カメレオンB」から製品の概要を紹介すると、このモデルは完全な台形のエンクロージャーにブラックレザーを張り、不要な共振をダンプしているほか音の反射を最適化するというこれまでの製品開発で培ってきた手法がとられている。内部の補強も上位機譲りでリジッドな構造を支える。15cm口径のウーファーにはポリプロピレンのダイアフラムを採用し、29mmサイズのドーム型ツィーターにはシルク素材を用いている。ネットワークには吟味したパーツを組み合わせて各ユニットの特性を引き出すことに力が置かれている。

 3Way4スピーカーで構成される「カメレオンT」は、不整形のエンクロージャー構造とすることで内部の定在波を抑制しそれぞれのスピーカーユニットの性能を引き出す工夫がなされている。18cm口径のウーファーを2基採用し、これに15cm口径のミッドレンジと29mmのシルクドームを加えた。ウーファーとミッドレンジの振動板はともにポリプロピレン製だが、ダイナミックな動きに適応する磁気回路にマウントされリニアな動きを可能にする。

 センタースピーカー用として発売された「カメレオンCは」、2Way3スピーカーに見えるが実際には左のユニットはパッシブラジエーターとして機能し、15cm口径のウーファーと29mmのシルクドームによる2Way構成である。カメレオンBと カメレオンTはそれぞれ底面と前面にバスレフポートを持つが、センタースピーカーのカメレオンCは前述したパッシブラジエーター型という点が異なっている。

ホームシアター用としても優秀

 それでは各モデルのサウンド・インプレッションをお届けしよう。試聴に用いたCDは「ストックホルムでワルツを」という邦題の付いたエッダ・マグナソン主演の映画のサウンド・トラックである。以前このアルバムから「テイク・ファイブ」を使ったが、今回の楽曲はビル・エバンスが作曲した「ワルツ・フォー・デビー」のカヴァーである。この作品の原題は以前にも触れた通り「モニカZ」と付けられたスウェーデン生まれのジャズシンガー、モニカ・ゼタールンドの半生を描いたものである。本国では2013年に公開され大きな反響を呼んだし、日本でも2014年11月に公開されているのでご覧になった読者もおありのことだろう。残念ながらぼくは劇場に足を運ばなかったので、ソフト化を待ち望んでいたが、なんとこのご時世に国内盤はDVDだけ。BDを探してようやく辿り着いた先がAmazon UKだった。

「ストックホルムでワルツを」(原題:MONICA Z)のサウンドトラック。レーベルはユニバーサルミュージック

 ところがこのBD只者ではなかった。UK盤だからリージョンBは致し方ないとしても、字幕はスウェーデン語とフィンランド語とノルウェー語だけ。英語がないってどういうこと?

 それでも手に入れて観てみました。物語の粗筋は分かりますが、案の定、スウェーデン語じゃディティールがさっぱりわかりません。それでも最後はほろりとします。特にビル・エバンスに「ワルツ・フォー・デビー」の歌入りテープを送り、本人から直接電話がかかってきて、後日ニューヨークのレノックス・ラウンジで見事に共演を成し遂げるまでは、落ち込んでも常に前向きなモニカの姿がよく描かれている。

 モニカ役を演じるエッダ・マグナソンの起用はプロデューサーが彼女のステージを見て即決したということだが、それにしてもよく似ている。加えて劇中のボーカルシーンは総てご本人の歌で吹き替えなし。もっとも彼女もシンガー・ソングライターなので、何ら不足感はないし、時にはモニカ以上の歌いっぷりでライブシーンに花を添える。

 収録は4Kカメラだが、この映像がまたとびっきり美しい。スウェーデン映画だからなぁ、と期待していなかったが、とんでもない。デイライトでのコントラスト感に富んだ描写だけでなく、室内シーンも巧みなライティングとともに丁寧な作り込みだ。LFEもサラウンドも活躍しないがダイアローグの録りもいいので登場人物の感情の起伏を良く伝える。とはいえこのままでは消化不良間違いなし、というわけで10年ぶりにVHS画質並みの国内盤DVDも買った、といういわく付きの作品のサウンド・トラックがこのCDである。

 カメレオンBは、いくぶんメロウなボーカルを聴かせるがニュアンスも豊かでピアノのタッチも悪くない。音量を欲張らなければいい感じで鳴ってくれるが、ブックシェルフ型なのでスタンドはしっかりした物を使うことが前提である。

カメレオンBの端子部

 カメレオンTはさすがに2基のウーファーのなせる技で鳴りっぷりがよい。サイズも大きいしバスレフ型なので少しだるくなるのではと思っていたが、そんなそぶりは微塵も見せず結構抜けの良いサウンドを聴かせるし力みもない。声の質感も丁寧に捉えてエッダの歌声に艶っぽさが増す点も好印象だ。

 センタースピーカーのカメレオンCはフロントにカメレオンT、リアにカメレオンBを組み合わせて映画作品を視聴してみたが、ダイアローグが引き締まりすっきりとしたマルチチャンネルサウンドを描きだす。ユニットに同一素材の振動板を使っているため、繋がりがよく空間の広がりも申し分ない。

 着せ替えができるという意外性だけでなく、スピーカー本来の性能を身に付けたカメレオン・シリーズは真っ黒な塊が嫌だという女性陣にも受け入れてもらえるのではないかと思う。スピーカー選びに悩んでいる読者には朗報となる製品ではないだろうか。

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