試聴にはエリック・クラプトンが昨年5月に英国ロンドンのロイヤル・アルバートホールで行ったライブコンサートのCDを使った。このCDはBDとカップリングされたパッケージに収容されている。BDは「サム・バディズ・ノッキン・オン・マイ・ドア」に始まる17曲を長年連れ添うベースのネーザン・イーストとドラムのスティーブ・ガッドが支える。演出としてプロジェクションマッピングのような照明がなされているものの、収録映像は不自然な加工もないしカット割りも順当な大人の絵作りがなされているので安心してライブ演奏が楽しめる。
CDは2枚組でBDに「リトル・クィーン・オブ・スペイズ」を加えた18曲の構成だ。その中から「ティアーズ・イン・ヘブン」を聴いてみた。この曲は誰が選んだか知らないが、以前にも紹介した「男泣き」シリーズの第3 位にランクされた楽曲である。ちなみに以前の記事をご存じない方のために付け加えておくと、「男泣きする」シリーズの第1位はR.E.Mの「エブリバディ・ハーツ」である。
BD同様、CDも味わいの深いサウンドでロイヤル・アルバートホールの響きをたっぷりと含んでいる。特にこの曲はエリックの思いがよく伝わってくるが、「PMA-2500NE」はそうしたニュアンスを十分に伝える。とりわけ感心したのはボーカルが一歩前にせり出し声の表情を実に豊かに描き出すことだ。前作「PMA-2000AE」も良くできたプリメインアンプだったが、比較すると今となってはいくぶん野暮ったい感じがしなくもないし、低域の伸びやかさも譲る。
最初は低域にかけての再現力はそれほど違わないように感じたが、聴き分けると2500NEのほうが全体にゆとりがあり進化していることが分かる。S/N感と微小信号の再現性が高まったことで会場のスケール感や空間の響きをきれいに描き出してくれることもうれしい。
このプリメインアンプを使いこなすうえで鍵となるのが「ピュアダイレクト」に設定された入力信号のモード切り替えだ。モード1ではデジタル信号がオフになるので、全体にすっきりとした仕上がりになりフォーカス感がアップする。モード2ではさらにディスプレイもオフになるため音の表情がよりしっかりとしてくる。デノンではモード1を推奨するが、純粋なアナログアンプとして使う人には私は2をお薦めする。
オールマイティな作りのなされたプリメインアンプだが、基本となるアナログアンプの手法を練り上げたところにこのモデルの存在意義がある。音作りにも新鮮味を感じさせるPMA-2500NAは、デノンの新しい定番モデルとしての歴史を作ることだろう。
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